“天才”ウルティモ・ドラゴンの挑戦「僕はプロレスを変えた。でも、今のプロレスは好きではない」
#インタビュー #プロレス
──プロレス黄金時代と今のプロレスの違いも感じましたか?
ウルティモ レスラーのオーラが全く違いますね。ただ、よく昔と今とどっちがいいかと聞かれるんですけど、時代の流れだし仕方ないと思うんですよ。それはそれでね。ただ、先輩たちと試合をさせていただいて、好きか嫌いかだったら僕は昔のプロレスの方が好きですよ。良い悪いじゃなくてね。でもじゃあ、今みたいなスタイルのプロレスの流れになったのはなぜなのかって言われたら、僕が変えた部分もある。自分で変えといて、何言ってんだって思われるでしょうけど。
──今のプロレスは、過激な技の応酬が中心になっています。
ウルティモ 若いレスラーたちの試合はすごいですよ。僕は正直言って最近は体力的に落ちてきたなと自分で思っていて、ああいう試合を1回やったら2週間くらい休まないと次はできんだろうと思いますね。今の若いレスラーというのは、それくらいハードな試合をしてますよ。それはすごいと思いますね。ただプロレス本来の、巡業があって毎日試合をこなしていくという意味では、そのスタイルは厳しいかなと思います。自分がジュニアのハードなスタイルの流れをつくって、それからさらにエスカレートしているので、そろそろ軌道修正した方がいいかなと。なぜかというと、レスラーも生身の人間ですから、これ以上ハードになったら危ないという心配がありますね。
──危険な技の応酬がないと、お客さんが満足しないという側面はありませんか?
ウルティモ それはね、僕はちょっと違うと思うんですよ。日本の今の若いレスラーは、ガチガチでやればお客さんが沸くと思ってる。本来のプロレスは、ドラマを積み上げて興味を引くようなシチュエーションをつくって盛り上げるわけですよ。でも、今は興行数が少ないからドラマがつくれない。1試合だけで魅せるというのは限界があると思うんですよ。だから、瞬間的に沸かせる大技に頼った試合になるのかなと。
──先ほど、昔のレスラーはオーラが違うという話がありましたが、プロレスもスケールが小さくなってしまっているのかもしれないですね。
ウルティモ レスラーだけじゃなくて、時代の流れだから仕方ないですけどね。僕は海外に住んでるから、日本は安全で良い国だとは思いますけど、政治も何もかも周りの反応を気にしすぎてスケールが小さくなってるように感じますね。このままだと危ないんじゃないかと思いますよ。
■今なぜ、メキシコのプロレスを日本でやるのか
──11月7日に開催される「LUCHA FIESTA」ですが、なぜ日本でルチャの大会を主催しようと思ったのでしょうか。
ウルティモ 僕の出発点になったメキシコという国に感謝の気持ちがあって、何かできないかなと。メキシコに対する恩返しという意味合いもあります。
──メキシコの空気を再現することが最大の目的だそうですね。
ウルティモ ルチャリブレができる日本の選手に加えて、本場の伝説的な選手を連れてきて、本物のルチャをやろうという大会です。メインイベントはメキシコのルールでやりますよ。日本のファンは馴染みがなくて「なんだコレ?」と思うかもしれないんですけど、それはそれでいいかなと。「これがルチャリブレなんだ」と。明らかに他の興行とは違うスタイルになると思います。
──試合以外でも演出があるそうですね。
ウルティモ ルチャリブレは、試合と観客のヤジや声援が一体になったものなんですよ。在日メキシコ人の方を会場に呼んでヤジを飛ばしてもらいますし、マリアッチ(メキシコの伝統的な楽団様式)の演奏もあります。激しい試合が目的なら、他の興行の方がいいかもしれません。でも、メキシコの空気を完全に再現できる興行はウチだけだと自負しています。あんまりルチャを知らないプロレスファンにこそ来てほしいですね。いろんなプロレスがあってもいいと思うんですよ。デスマッチとか2階から落ちたりとか。でも、それだけがプロレスじゃないよと。
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