「どうやってセックスすればいいの?」当事者たちの生の声が満載『身体障害者の性活動』
#本
時折取り上げられるテーマでありながら、実態が知られることは少ない「障害者の性。ある意味、キワモノ的に取り上げられてばかりの社会問題といえる。
そうした中、今年7月に出版された『身体障害者の性活動』(三輪書店)は、「障害者の性」を個別具体的に取り上げる前例のない書籍だ。発行元は、医学書・医学関連書籍を専門に扱う三輪書店。いったい、どんなに堅いことが書いてあるのかと思ったら、表紙のイラストはリリー・フランキー氏。帯は宮台真司氏といった具合。専門書なのか、一般書なのか、判然としないままページをめくってみて驚いた。そこには、障害者のセックスが具体的にどのような形でサポート可能なのか。さらに、脳性麻痺や頸椎損傷など、障害別に当事者たちがどのようにしてセックスを行っているのかが具体的に記されている。図版や写真を用いることで、当事者だけでなく支援に当たる人々がどう接すればいいのか知ることができるのだ。
具体例の多くは当事者が執筆しているため、文体は少々硬めになっているものの、生々しさが伝わってくる。さらに、「障害者専門デリヘル」の元デリヘル嬢が執筆している項目もあり、一冊で「障害者の性」の全体像を知ることができる構成になっている。
「企画が立ち上がってから、書籍化までの道のりは楽ではありませんでした」
と、編著者の一人で、当事者でもある熊篠慶彦さんは語る。熊篠さんは自ら望んでAVに出演したり、「障害者の性」の問題を扱うNPO法人・ノアール理事長を務めたりと、非常にアクティブな人物だ。日常の移動には電動車椅子を用いているにもかかわらず、ハンディキャップをあまり感じさせることはない。継続的に開催しているイベントでは、ノアールを支援しているTENGAが、名物商品「TENGA EGG」を配布しているし、熊篠さん自身もかなり女性に目がない――。と記すと、面白おかしい人物かと思われそうだが、本書に記されたような問題を語る時、彼の態度は非常に真摯である。
「出版のきっかけは、2010年に共編著の玉垣努さん(神奈川県立保健福祉大学教授)と開催したイベントです。その時、私自身がセックスしている動画を使って、障害者の性の問題について語り合いました。その時、来場していた三輪書店の方が『これを書籍化しましょう』と提案してくれたんです」
しかし、そこからの道のりは厳しかった。本のテーマは、障害者の性の実態をありのままに描くことだ。だが、それほど困難な問題はない。
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