マンガ家・大橋裕之版『スタンド・バイ・ミー』? 子どもたちのひと夏の冒険を描いた新作『夏の手』
#マンガ #インタビュー
大橋 事の発端は、幻冬舎の担当編集者さんが、「自費出版で出していたときの短編を集めて、単行本を出しませんか?」と。それで、この『夏の手』を持っていったらすごく面白がってくれて、「これの続きを描きませんか?」とおっしゃってくれたんです。それで、僕の思いとも合致したというわけです。
──この作品の単行本自体は、三段階の構成になっているんですよね。まずは「週刊オオハシ」掲載時の『夏の手』があり、「papyrus」連載時の『夏の手」があり、描き下ろしの『夏の手』がある。なんでも、描き下ろしの作業はとてつもないスケジュールだったとか?
大橋 68ページの作画を2日間でやりきりました(笑)。どう考えて無理だな、と思ってたんですが、なんとかできちゃいました。
──それでは具体的に、物語の内容に移りますが、3人の少年と1人の少女が出てきて、基本は少年の冒険譚というのがベースですが、恋愛あり、SFチックなところがあります。そこで大橋さん独特のペーソスというか、叙情派でロマンチックな部分も加わって、という感じですよね。
大橋 ありがとうございます。でも、かつてこの作品をマンガ雑誌の賞なんかにも出したんですけど、全然引っかからなくて……。
──物語の筋道としては、「今年は夏が来ない」と言う少女・なっちゃんの言葉を真剣に受け止めた少年3人が、人称化された「夏さん」を探す話ですよね。これは事前に考えていた構想だったんですか?
大橋 昨日、思い出したんですが(笑)、1970年代初頭に活動していた乱魔堂というバンドがいまして、「可笑しな世界」という曲があるんですけど、その歌詞の中に、「夏が来てるって」という歌詞があるんです。その歌詞を耳にしたら、夏が人間のような感じに思えてきて。そこが発想の出発点だったんですね。夏に人格みたいなものがあったら、と思うと、奇妙に思えてきたんです。
──いちばん重要な人物として出てくる少女・みっちゃんのキャラ設定は本当に絶妙ですよね。アホでいじめられっ子の少年・タケシより「アホ」なキャラクターとして登場して、単純な「不思議ちゃん」に思えるし、本当の「キチ○イ」のようにも思えてきました。
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