“最後の避難所”に身を寄せる、双葉町避難民へのしかかる“時間”の重み
#映画 #インタビュー #東日本大震災
舩橋 そうですね。今年9月から、無料で配られていたお弁当が有料化されました。が、肝心の土地や家の賠償はまだ始まっておらず、再スタートのためのお金をもらえていない。避難者も時間がたつことによって余裕がなくなってくるから、賠償も「いくらでもいい、なんでもいいからちょうだい」となってしまうでしょう。これは水俣病の時にも行われていた、卑怯な方法なんです。日本は水俣病の当時からまったく成長していません。
――行政に対しては、何が一番の問題だと思いますか?
舩橋 時間軸方向での被害を見積もるのが、日本人は下手ですよね。どこが何マイクロシーべルトなのかとマメに放射線量を測定することは得意なのですが、「何年まで住むことはできない」と、時間軸方向で被害を見積もることができません。「いつか改善されます」「わからない」で済ませてしまうことが多い。わからないのであれば、仮に「40年は住めない」と設定して合理的な判断をしていけばいいのに、避難者の時間は引き延ばされて、どんどんと待ちぼうけにされてしまう。それは時間的な損害なんです。その損害によって、避難者はどんどん疲弊してしまいます。
――では、このような状況で、双葉町民にとっての希望とはなんなのでしょうか?
舩橋 「仮の町」だと思います。今、双葉町では「7000人の復興会議」として町民を集め、どうやって次の町を生み出していけばいいのかを町民たちが議論しています。時間がたつと、人々がばらばらになってしまいますから、できるだけ早く仮の町構想をまとめてほしいですね。その構想を知るだけでも、避難者にとっては生きる希望となるはずです。
――観客には、どのようなことを感じてほしいですか?
舩橋 映画を編集する際は、観客も避難所で日々を過ごしていると感じられるように腐心しました。朝起きて、散歩して、弁当食べて、タバコ吸って、テレビのニュースでは原発の作業は何も進んでいないと言われ、夜が更けていく……。避難者を取り巻いている、延々と続く時間の重みを感じ取ってほしいと思います。
――それは「当事者」を疑似体験することにほかなりませんね。
舩橋 避難を他人事とせず、できるだけ感情移入してほしい。まさしく自分が避難所で毎日を過ごしていて、やっと3カ月ぶりに2時間だけ一時帰宅することができる。そんな時間の流れを、時系列で体感してほしいんです。5分のニュースでは伝えられない時間の重みを描くことができるのが、ドキュメンタリーですからね。
(取材・文=萩原雄太[かもめマシーン])
●ふなはし・あつし
1974年大阪生まれ。東京大学教養学部表象文化論分科卒後、ニューヨークで映画制作を学ぶ。長篇映画『echoes』は仏アノネー国際映画祭で審査員特別賞、観客賞を受賞。第2作『BIG RIVER』(2006年 主演オダギリジョー、製作オフィス北野)、第3作『谷中暮色』(2010年)と本作『フタバ〜』は、3作品連続ベルリン国際映画祭に正式招待と、国際的な評価を得ている。
●『フタバから遠く離れて』
10月13日(土)より、オーディトリウム渋谷ほか全国順次ロードショー
<http://nuclearnation.jp/jp/>
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