「この社会情勢が続く限り、どこかでまた起こる」2カ月間の“お祭りデモ”とはなんだったのか?
#原発 #デモ
人が集まった最も大きな要因は、20年も経済が低迷して、雇用も家族も不安定になっているのに、政治がまったく機能していない、と不信感が募っていたことでしょう。そんなところに起こった原発事故の対応は、誰がどう見てもお粗末だった。情報公開も足りないし、政府は手続きさえ済ませればいいと考えている、と思われてしまった。それではどこの国だって、何か起こらないほうがおかしい。外国の報道はそんな感じですし、官邸周辺に毎週何万人も集まったら、それは相当まずい事態だと普通なら考えます。無視できない事態になってしまったから、首相がデモ主催者と面会せざるを得なくなった。そういう当たり前のことを、当たり前に受け止められない人が、「日本でそんなことが起こるはずがない」とか「ただのブームだ」とか言うんでしょう。
――そんな“お祭り”デモですが、一時期に比べると、徐々に参加者の熱が冷めてきてしまっている印象があります。7月上旬までは、車道以外は比較的どこからでも抗議可能だったのが、デモエリアが3カ所に分けられ人数が分散されている影響もあるのかもしれませんが、20~30代の若い層の参加者が減ってきている気がします。
小熊 デモが“お祭り”なのは、最近はどこの国でも共通です。またデモに限らず、お祭り的なものは、1~2カ月したらピークを過ぎます。何年も同じ場所で同じ状態が続くなんてありえない。とはいえ経緯としては、昨年4月から高円寺の人たちの主催で盛り上がったデモは半年で一区切りを迎え、これで終わりかなと思っていたところに、今度は別の主催で官邸前に集まった。官邸前しか見てないマスコミは、一時のブームだったと思うかもしれませんが、全体から見れば脈動みたいなものです。経済停滞と政治の機能不全という状況は変わっていないし、どこかでまた何か起こると思いますよ。
――“お祭り”でも、原発再稼働が広がらないためのリミッターとして機能したのでしょうか?
小熊 それは間違いないですね。日本ではここ半世紀、こういう経験がなかったものだから、社会運動の効果に懐疑的というか、何が起こっているのか、みんなよくわかってない。けれど外国のことだと思ってみれば、こんなに停滞して不満が高まっていた国で、官庁街に毎週何万人も集まったら、影響がないはずがないでしょう。大飯原発の再稼働は、福島原発事故から1年たってほとぼりも冷めたようだし、もう大丈夫だろうと形式的な手続きを踏んでやったわけですが、そうしたらあんな騒ぎになってしまったというのは、政治家にとって怖いことですよ。「日本の政治家だけは例外だ」ということはない。
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