月面ナチスが地球侵略!? 『アイアン・スカイ』はファンからの支援金で完成したネオトンデモ映画
#映画 #インタビュー
知性とエネルギッシュさを感じさせる、身長198cmの大男です。
■現在の社会情勢は、ナチスの時代にそっくり!
──『アイアン・スカイ』には、スタンリー・キューブリックやポール・バーホーベンといった巨匠たちへのオマージュも込められていたんですね。舞台設定は2018年。戦争好きな米国の女性大統領は、不適切発言の多さで知られるサラ・ペイリン共和党議員がモデルですか?
ティモ アハハ、やっぱり似てる? いやいや、特定の個人をモデルにしたとは、監督であるボクの口からは言えないよ(笑)。多分、似ているのは偶然じゃないかな〜。米国大統領を痛烈にコキ下ろしている内容から、ボクのことを米国嫌いだと思うかもしれないけど、実はボクは米国のことが大好きなんだ。米国のポップカルチャーに触れて育ってきたわけだし、米国人のおおらかな気質は大好きだよ。でも、米国の外交政策だけは別。“世界の警察”であらんとして、諸外国の問題に次々と介入していく。そういう海外に対する高圧的な外交姿勢は大キライだね。米国に対してはLOVE&HATEな感情を持っているよ。でも、今の国際社会で問題なのは、米国だけじゃないと思う。世界全体の問題じゃないかな。今の国際情勢に関しては、すごい懸念を感じているんだよ。
ハーケンクロイツ型のレトロなデザインが
いい感じ。
──劇中の女性大統領は月面ナチスの地球侵攻を逆利用して支持率アップを狙う。プロパガンダ戦略が巧みだったナチスドイツとメディアを操作する現代の米国は共通点がありますね。
ティモ そうだね、メディアコントロールに力を注いでいる点でもよく似ているよね。今回、ナチスを題材にするにあたって、1930年代のドイツがどういう状況だったのか、すごく調べたんだ。驚くほど、現代と似ている状況だったんだ。政治がメディアを操作していたこともそうだし、経済状態が落ち込んで国民の不満が大きくなっていることもそっくり。これは米国だけでなく、欧州各国にもいえること。ゼノフォビア(外国人嫌い)が増えて、極右やタカ派が台頭してきている。やがて極端な愛国心が高まっていく……。経済危機に陥ったギリシアだけでなく、ボクが暮らしているフィンランドも似たような状況になってきているんだ。
──ヤバいなぁ、アジアも同じような状況ですよ。ドイツやオーストラリアで撮影された本作。鉤十字の入った軍服や小道具をドイツに持ち込むのが大変だったと聞いています。今でも“ナチス”ネタは欧州ではタブーなんですね。
ティモ 衣装にSSや鉤十字の紋章が縫い付けてあったので、フィンランドからドイツに持ち込む際に大変厳しくチェックされたよ。今でもナチスを連想させるものはドイツ入国の際に拒否されるんだ。ずいぶん多くの書類を申請して、映画の撮影に使うものであることを証明して、ようやく入国できたんだ。でも、それは仕方ないことだろうね。実際に最近のドイツではネオナチというのが出てきて問題になっているんだ。ボクらは許可をもらってフランクフルトで撮影をしたわけだけど、カメラが回っていない間は軍服を着た俳優たちにはコートを上から羽織ってもらうなどの配慮をしたよ。撮影に協力してくれている地元の人たちの感情を逆なでしないように気をつけたんだ。
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