これが全米を熱狂させた“USA版バトル・ロワイアル”! 殺人リアリティーショー『ハンガー・ゲーム』
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12歳になったばかりの妹に代わってゲームに出場することに。
同級生同士が殺し合いを命じられた『バトル・ロワイアル』と違って、『ハンガー・ゲーム』は全国各地から集められた、見も知らぬ少年少女たちが命を奪い合うというもの。テレビ中継されていることから、視聴者受けのいいプレイヤーはスポンサーから優遇され、薬品などの追加アイテムをゲットすることができる。ぎくしゃくした関係にあったカットニスとピータだが、ゲーム前のテレビ番組でサプライズが発生。みのもんた似のインタビュアーに対し、ピータは「ボクには想いを寄せている女の子がいます。ゲームが終わった告白するつもりでした。その子はカットニスです!」とカミングアウト。一方的な発言に激怒するカットニスだが、ピータは「悲劇の恋人同士であることをアピールしておけば、ゲームが優位に動くはず」と説く。例え最終的に殺し合うことになっても、少しでも長生きしたいという、弱者ならではのアイデアだ。ハンガー・ゲームの参加者はただ殺傷能力が高いだけではなく、マスメディアにどう巧く対処できるかも重要な生き残りポイントとなっている。今どきの小中学生たちが自分自身をキャラクター化して、クラス内での居場所を確保するのにも似ている。
2008年にハードカバーの初版本が出版された『ハンガー・ゲーム』の原作者スーザン・コリンズによると、「書き上げるまで、『バトル・ロワイアル』の存在は知らなかった」とのこと。テレビをザッピングしていたら、人気リアリティー番組とイラク戦争のニュースが交互に映し出されたことから思い付いたそうだ。また、スーザンが6歳のときに父親がベトナム戦争に兵役で赴いたことも大きく影響している。10代の少年少女が武器を手に殺し合うことから残酷な印象を受けるが、日本もおじいちゃんおばあちゃんたちが若かった頃は世界を相手に戦争をやっていた。若者たちは片道分の燃料だけ積んだ潜水艇や戦闘機に乗って、敵軍に突撃するよう命じられた。米国は石油利権を確保するため、中東に度々派兵している。米兵の多くは就職先が見つからなかった下流層の若者たちだ。先進国に輸出するレアメタルなどの地下資源をめぐって、アフリカでは戦火が絶えない。紛争地における少年兵・少女兵の数は25万人に及ぶと推測されている。『ハンガー・ゲーム』で描かれていることは特別なことではない。人間は自分たちの生活を維持するためなら、戦争が起きることはやむを得ないと考える生き物なのだ。いや、むしろハンガー・ゲームは視聴している国民たちにとって日常の不満を解消する“ガス抜き効果”がある。国民の苛立ちを海外に向けさせて不用意に戦争を始めるよりも、最小限の犠牲者数で済む。極めて理知的な血のセレモニーである。
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