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『ケルベロスの肖像』刊行記念!!

ベストセラー作家・海堂尊に聞く「“チーム・バチスタ”シリーズ、そして日本エンタメ界の未来」

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 2006年に刊行された、海堂尊さんのメディカル・ミステリー『チーム・バチスタの栄光』(宝島社)。「東城大学医学部付属病院で相次いで発生している術中死を、心療内科医・田口公平と厚生労働省の役人・白鳥圭輔のコンビが調査してゆく」というこの作品は、スピーディな展開と魅力あふれるキャラクター、医療現場のリアルな描写が話題を呼び、デビュー作ながら大ヒットを記録した。

 以降、『ナイチンゲールの沈黙』『ジェネラル・ルージュの凱旋』『イノセント・ゲリラの祝祭』『アリアドネの弾丸』(すべて宝島社)と相次いで続編が刊行され、今日までシリーズ累計1,000万部超という驚異的なセールスを誇っている。08年に竹内結子&阿部寛主演で映画化、同じく08年に伊藤淳史&仲村トオル主演でドラマ化もされているので、ご覧になった方も多いだろう。

 そして今年7月に刊行された最新作『ケルベロスの肖像』は、シリーズ第6作にして完結編。田口&白鳥コンビの物語にピリオドを打った理由とは? そして気になる今後の展開は? 著者の海堂尊さんにインタビューした。

■シリーズ完結にふさわしい盛り上がり

海堂尊(以下、海) シリーズをこういう形で終わらせよう、というのは、実はデビュー前から考えていたことです。『チーム・バチスタの栄光』、『螺鈿迷宮』(角川書店)、そしてこの『ケルベロスの肖像』はさまざまな医療の崩壊を描いた三部作になっている。当初は、この三作を書き上げて、覆面作家のままソッと消えてゆこうと思っていました。でも、いざデビューしてみるとそうは問屋が卸さなくて……(笑)。ほかの作品を書いていたせいで、三部作の完結までこんなに時間がたってしまったんです。

 シリーズ完結の経緯について、こう語ってくれた海堂さん。作品の舞台となるのは、今回も東城大学医学部付属病院だ。ある日、病院長のもとに「八の月、東城大とケルベロスの塔を爆破する」という謎めいた脅迫状が届けられる。誰が、何のために? 「ケルベロスの塔」が意味するものとは? これまで数々の事件を解決してきた心療内科医・田口公平は、院長の命を受け、密かに調査を開始することになる。

 爆破予告があり、それを田口が調査するというアイデアも、デビュー前に考えていた通り。考えてみると、構想7年の作品ということになりますね。一度「これだ」と思ったアイデアは忘れないんですよ。7年前に思いついた大枠に、デビュー後に書いてきたさまざまな作品の要素が入り込んで、今ある物語が出来上がりました。

 同一の世界観のもと、すべての作品が(出版社の壁すら越えて)リンクし合っているのも海堂ミステリーの大きな特徴だ。中でもこの『ケルベロスの肖像』は、『ブラックペアン1988』(講談社)や『螺鈿迷宮』など、他社のシリーズで描かれた事件にもあらためてスポットが当てられ、一大フィナーレを飾るのにふさわしい盛り上がりを見せている。

 現実世界では、地球上のあらゆる出来事が同じ時間軸の中に存在していますよね。例えば今ここで僕がインタビューを受けている間も、ほかのどこかではプロ野球選手の秘密特訓が行われているかもしれないし、将棋の重要な対局も指されていたりするわけです。虚構世界も現実世界と同じような構造じゃないかな、と思ったりするんですよ。バラバラに見える物語世界も、どこかではつながり合っているはず。僕はそれを統一したいんです。とはいえ、デビュー以来20作も書いてくると、登場人物だけでも1000人近くと、なんだかものすごい数になっています。執筆前におさらいするだけでも大変ですね(笑)。三部作のゴール地点として、今回の『ケルベロスの肖像』のことはずっと頭にありました。『ブラックペアン1988』や『螺鈿迷宮』を書いていた時も、これは『ケルベロス』に絡めたら面白くなりそうだ、と考えていましたしね。

 シリーズ当初はやや頼りないキャラクターとして描かれていた主人公・田口公平も、病院内の濃すぎる面々に揉まれるうち、次第に人間的に成長。今作では病院内の重要ポストを担う人物として、頼りがいのある一面を見せている。

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