【後藤まりこ】ダウナー系パンク娘が、恨みを綴った「恨み帳」を閉じて、イメチェン?
#音楽
──00年代に、坊主頭にセーラー服の個性的すぎるいでたちと、ハードコアパンクなパフォーマンスで音楽ファンを驚かせたバンド・ミドリの後藤まりこがソロデビュー!
サウンドもヴィジュアルも、ふっきれたようにキュートに!? かつて後藤まりこがギターとボーカルを担当していたバンド・ミドリの解散から1年半以上たったとはいえ、このイメチェンぶりには驚かされた。彼女に、いったい何が起こったのか? 率直に本人にぶつけてみると、客観的にこんな分析をしてくれた。
「後藤まりこさんはね、以前はジャズ・パンクと言われるような激しい音楽性のバンドをしていた方なんですけれども、どうやら世間的には丸くなられたみたいで(笑)。でも、一見ポップになったと思われがちやけども、実際には、今でも、いつでも心にハードコアを持っているみたいですよ」
そう、かわいらしい見た目にごまかされそうになるが、この人の漂わせる、ストイックな表現者特有の緊張感は昔から変わらない。しかし、そんな後藤も、バンドの解散後は音楽活動を完全に辞めるつもりだったという。
「辞めるつもりだったというか、スッパリ辞めたんです、一度は。そしたらすごーく開放感がありました。遊び歩いたり、ヨガ教室に通ったりもしたんですよ。ぜんぜん続かへんかったけど。
そのうち震災があったりして気持ちが大変だったりする中で、だんだん虚無感とか焦燥感が襲ってきて、そのときに『あ、ボク、音楽のことがすごく好きやし、大事やった』ってことに気づいたんですね。
それで、すごく葛藤もあったし、ずっとミドリのこと思ってくれてた人や、いろいろ迷惑をかけた人には悪いけど、もう一回、音楽をやってもいい? って」
曲はすぐにできた。鼻歌でメロディーをつくり、歌詞も自然と浮かんできた。
「素晴らしい!『今日』という日は/私を肯定しまくる、メロディー」(「ままく」)。
一度、音楽から離れたとはいえ、今作はどの曲もポジティヴ感に溢れているのには、なにかきっかけのようなものがあったのだろうか?
「うん……あった、と思います」
何かを思い出すように、ゆっくりと口を開く後藤。ちなみに彼女はバンドの解散直前に結婚をし、今回、ソロ活動を開始する前に離婚をしている。そのことも関係している?
「そうですね。詳しくは言わないですけど、その人といろいろ話したことも関係していると思います。ただそれだけに限らず、生きていることで体験するすべてに影響されてて、その上でのアウトプットなので。音楽で何か言いたいとかではなくて、ただ普通に音楽をやろうとしたら、こうなったんです」
新しい曲たちを支えるバックバンドには、気心の知れた腕っこきたちが集まった。かつてのバンド活動とは、やはり違うものになったのだろうか。
「ぜんぜん違いますね。以前はバンドという運命共同体を自分ひとりで背負おうとしてしまっていたんですけど、今はボクの好き勝手にやらせてもらって、それに対してメンバーからいいレスポンスを返してもらってる。すごく楽しいです。あと、昔はイヤなことがあっても、その場では絶対言われへんかったのが、今はバンバン口に出せるようになった。バンド練習の初日に、ドラムの千住(宗臣)くんと個人的なことでいきなり口論になったんやけど(笑)、そのまま初日からメッチャ飲んで、いろいろぶつけて仲直りして。青春!! みたいな。そういう意味では、ホント変わったなぁって思う」
かつては対人関係でイヤなことがあると「恨み帳」に事細かく記録していたという後藤。だが、それももう必要なさそうだ。
「まだ家に置いてあるんですけどね、恨み帳(笑)。でも、もう必要ないでしょう。今は音楽を、すごく普通のこととしてできているのが、楽しくてしょうがないんです!」
(文/九龍ジョー)
後藤まりこ(ごとう・まりこ)
大阪府生まれ。2003年に結成したロックバンド・ミドリのボーカルとギターとして活動。10年にバンド解散後、一時の活動休止期間を経て、ソロデビューを果たした。ミドリ時代は、坊主頭にセーラー服、裸足でステージを駆け回るなど、強烈な個性で音楽ファンを魅了。8月からロックミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』に出演する。
『299792458』
後藤まりこ初のソロアルバム。ゲストミュージシャンとのジャムセッションを経てできたという本作。ポップなメロディーと骨太なバンドサウンドの中で、後藤のボーカルがより引き立っている。アルバムタイトルは、『299792458』と書いて “ごとうまりこ”と読むらしい。そんなところが”相変わらずなゴトウさん”っぽいです。
発売:デフスターレコーズ
価格:(初回生産限定盤)2800円 (通常盤)2300円(共に税込) 発売中
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