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日刊サイゾー トップ > カルチャー > 本・マンガ  > 震災で「復元納棺師」が見た風景

『おもかげ復元師』震災で300人以上の遺体を修復した「復元納棺師」が見た風景とは?

fukugenfukei.jpg“復元”のようす

 容貌が変化してしまった遺体の硬直を解き、マッサージで顔色を変え生前の安らかな表情に復元して納棺を行う「復元納棺師」として、岩手県を拠点に活動している笹原留似子さん。東日本大震災の折には、ボランティアとして300人以上の方の遺体を復元した。その際の様子を含めた死の現場を描いたエッセイ『おもかげ復元師』と、震災で復元した方のお顔を描いた『おもかげ復元師の震災絵日記』(共にポプラ社)を8月に上梓。『震災絵日記』は、ボランティア活動を終えたあと、実際に遺体を復元したひとりひとりを思い出しながら描いたという。

――震災の時は、10キロも痩せたそうですね?

笹原留似子(以下、笹) そう、もともとはすごく細かったんですけど(笑)。被災地はどこもお店は開いていないし、また、たとえ食べ物を持参していても、復元作業に入って集中すると、途中で休憩はしません。3時間の復元が3件続くと、朝から晩まで食事する時間はないですね。体力も必要ですが、あの時は神経も使いました。遺体安置所では、遺体の復元を必要とするご遺族がいつでも話しかけられるような雰囲気も作っておかないとならないから。

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 震災では津波によって傷ついた遺体も多く、また発見されたのが数日後というのは早いほう、中には数週間後、数カ月後というケースも珍しくなかった。当然ながら時間がたつほど傷みは激しくなる。愛する人を亡くすということだけでも耐え難いのに、その変わり果てた姿にさらにショックを受け、死を受け入れることができない遺族も多い。愛娘を直視できない両親、「こんなのお父さんじゃない!」と泣き叫ぶ子ども……。エッセイを読むと、どのような姿でどうお別れするかは、遺族がその後どう生きていくかに大きく影響することがわかる。

 一般的な納棺師は、遺体から出る臭いを抑える処置や死化粧はするが、激しい損傷の復元はしない。海外ではエンバーマーが復元を請け負う場合もあるが、それは亡くなって間もない場合だけ。たとえ腐敗しウジがわいていても復元を請け負う笹原さんのような存在は、世界を探しても非常にまれだ。

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 例えば顔に穴が開いている時は、そこから体液や血液が出ないよう止める作業をしながら、同時に陥没部を埋めていきます。亀裂で顔が広がってしまっている場合は元に戻し、それを火葬まで安定した状態でもたせるようにします。震災では、一部が白骨化したような方の復元も行いました。それまで経験したことがなかった作業なので難しかったけれど、ご遺族の前で「できない」とは言えませんでした。物資が不足する中、生前の写真を見ながら、脱脂綿など、あるものをなんとか組み合わせて復元しました。ワックスを使うこともありますが、それだけでは形が崩れるので、さらに加工して、ご遺族が触れられるような状態に仕上げていきます。お別れの際、「実際に触れる」ということは、とても大事なことですから。

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