『ガレキ』──日本を席巻した200日の瓦礫問題が投げかけた震災後の「当事者性」【前編】
#東日本大震災
■東京に当事者性があったということ
丸山 先ほどの関東以西が初めて東日本大震災の当事者になったという話でいうと、震災発生直後は、地域による温度差を確かに感じました。震災後に、九州や沖縄を取材していたのですが、東京ではいたるところに貼ってあった「絆」ステッカーが、西に行くほど少なくなっている。現地で話を聞いてみても、当事者性の薄さというのは感じられました。
萱野 関東以西の温度差は違いましたね。逆に言えば、東京があそこまで揺れて、計画停電の実施や、荒川区で高い放射線量が検出された等の出来事がなければ、全国問題としてここまでの大きな扱いにはなっていないかもしれない。東日本大震災は東京が巻き込まれた災害だった、つまり東京に当事者性があったということです。だからこそここまでのナショナル・インタレストになったということはあるでしょう。
丸山 石原都知事の瓦礫受け入れについての発言も、まさに東京に当事者性があったことを示しています。
萱野 関東以西などの地域の人たちにとっては、瓦礫受け入れ問題によって初めて当事者性に直面した。そうした時に、それまでとは違う側面、被災地を否定するような反応も見えてきたということですね。
(後編へ続く/取材・構成=香月孝史 http://katzki.blog65.fc2.com/)
●まるやま・ゆうすけ
ジャーナリスト、ノンフィクション作家。1977年宮城県仙台市生まれ。考古学を専攻し國學院大學大学院修了後、日雇いや派遣労働などを経てビジネス書出版社に勤務。その後、フリージャーナリストとなる。裏社会の要人や犯罪者へのインタビュー、国内外の危険地帯への潜入取材を得意とし、これまで週刊SPA!、週刊現代、FLASH、週刊アサヒ芸能、日刊サイゾーなどの各媒体で北九州連続企業テロ事件、東日本大震災の火力発電所原油流出事故、避難所の性問題、福島原発5km圏内の被災動物などのルポを発表している。
●かやの・としひと
1970年、愛知県生まれ。03年、パリ第十大学大学院哲学科博士課程修了。哲学博士。津田塾大学准教授。主な著書に『国家とはなにか』(以文社)、『カネと暴力の系譜学』(河出書房新社)、『権力の読みかた』(青土社)など。近著に『最新日本言論知図』(東京書籍)、『新・現代思想講義 ナショナリズムは悪なのか』(NHK出版新書)など。
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