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日刊サイゾー トップ > 社会  > 【震災から1年半】福島のいま

震災から1年半……「傷ついた心の復興は進んでいない」福島のいま

 国道から外れ、海のほうへと車を走らせると、津波でぐにゃぐにゃにねじ曲げられたガードレールや、雑草の間に横たわるがれき、折れたままの電柱などが目に付く。ちょうど1年前にも僕はいわき市を訪れたのだが、まさにその時に見たままの状態だった。

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 以前、ある避難民が「家に戻るつもりはない」と語る姿をテレビで見たことがある。避難先で、あくまでも“仮の生活”を送る彼らが、いったいどうして故郷に戻る気持ちを失ってしまうのか、その時はまったく理解できなかった。しかし、楢葉町の風景を見るにつれ、なんとなくその気持ちもわかってくる。

 1年半の歳月をかけて、彼らは避難先での生活を積み上げた。その生活を捨て去り、ゼロ以下のマイナスから新たな生活をスタートさせるのは、とても難しいことだろう。すでに世間や自分の中にあった非常時の一種の高揚感も静まった。荒れ果てた故郷を元に戻そうというパワーが出ず、避難先での現状維持を望むのは決して特殊なことではないだろう。

■観光バスが被災地に乗り付ける

 続いて訪れたのは、いわき市の北端沿岸部に位置する久之浜地区。地震発生直後、津波、火災が重なり壊滅的な被害を受け、この地域だけでも数十人の人々が亡くなった。

 昨年訪れた際は、緊急にがれきを撤去し、やっと車が通れるような状態だった。そこから1年を経て、現在ではがれきやボロボロの建物のほとんどは撤去され、基礎だけしか残されていない更地の状態が広がっている。

 地元住民によれば「がれきや壊れた建物が残っていると、暗い気持ちになってしまうから、なるべく早く取り除いたんです」と、スピーディな歩みを進めてきた久之浜。だが、ここに来て、ある問題点が湧き上がっている。「集団移転をするのか、この場所で住み続けるのか、役所のほうで今後の方針が定まらず、建物を建てることもままならない。方針が決まれば着工できるんだけど……」と、対応の遅い行政にいら立っている様子だ。

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 そんな久之浜地区を取材していると、観光バスに乗った集団がやってきた。遠目から見ると、オバチャンたちの集団だろうか。まるで、観光地に降り立ったかのように日傘を差しながら久之浜の状況を写真に収めている。自分のことを棚に上げ、どことなく感じてしまう違和感。だが、その風景を見たある住人が語った言葉が印象深かった。

「久之浜の現状を見てもらうことは、次の防災につながると思うんです。いろいろな意見はあると思うが、個人的にはどんどん来てほしいと思っている」

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