アジア人と結婚する「なでしこ姫」増加と「生涯未婚率」上昇のやるせない関係
#本 #インタビュー
――最近、研究者や技術者などの海外への頭脳流出が話題になっていますが、「なでしこ姫」という現象は頭脳流出、人材流出につながるのでしょうか?
開内 頭脳流出というよりは、国民流出だと思います。「なでしこ姫」はある程度の高い教育を受けている方が多いのですが、頭脳流出というのは、高度な技能を持ったエリートが国外で働くことを選択し、国内の技術が衰退してしまう問題を指します。なでしこ姫の問題はそれとは違う。彼女たちがもし中産階級の男性だったら、ある程度の企業で、ある程度の役割を果たし、日本の社会や経済を動かしていくであろう女性たちです。さらにいえば、日本で結婚していれば、将来、日本の社会や経済を動かしていく子どもを育てるであろう女性たちです。そういった意味で、日本の国力の衰退に関わる国民流出と考えるべきでしょう。
――そのような日本社会の中核を担っていくような女性たちは、今後も国際結婚をし、海外へ移っていくのでしょうか?
開内 内閣府が行った「結婚・家族形成に関する調査」では、「結婚相手が外国人でも構わない」という質問に男性は28.4%が「YES」と答えたのに対し、女性では46.3%が「YES」と答えました。これを東京の大学で調査すると、約70%の女性が国際結婚に好意的です。また、海外生活を経験したことのあるようなグローバル化したエリート男性は、日本人女性を結婚相手として選ぶことが多く、非常に保守的な考え方の人が多い。ですから、彼らは身近にいるグローバルに活躍する「なでしこ姫」とは結婚しません。そう考えると、日本人女性の国際結婚は増えていくのではないでしょうか。
――結婚難についての対策はありますか?
開内 本書で、私と山田先生は、ジェンダーに関する問題を「なでしこ姫」や「絶食系男子」というキャッチーなキーワードで読みやすく書きました。しかし、本書で書いたことは社会構造の問題であり、経済や社会保障の問題とも関わってきます。一番の問題となるのは、就職も結婚も難なく手にした「勝ち組」の男性の意識でしょうか。「勝ち組」の彼らはモテ格差も就職格差もジェンダー格差も他人事なので、シビアでいられる。彼らが自分とその仲間以外の問題を見ようとしないなら、日本の恋愛だけでなく、男性間の格差も構造も変わりません。ですが、そのような「勝ち組」の男性と結婚し、とりあえず社会保障として守ってもらうのが、日本人女性の生き方として、一番、リスクが少ないのかもしれません。
――本書を、どんな人に読んでもらいたいでしょうか?
開内 バリキャリ系の女性を応援したい男性に読んでほしいです。そういう男性には大きな心で、自分の力でやっていきたいという女性を温かく見守ってほしいですね。
(構成=本多カツヒロ)
●ひらきうち・ふみの
一橋大学大学院言語社会研究科博士後期課程退学。現在、中央大学文学部兼任講師、フェリス女学院大学文学部非常勤講師。専門は家族社会学、ジェンダー理論、グローバリゼーション論。主な訳書に、C.コーワン&P.コーワン『カップルが親になるとき』(共訳、勁草書房)、Z.バウマン『幸福論――“生きづらい”時代の社会学』(共訳、作品社)がある。
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