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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 芸人ラジオはハードルが高い?
ラジオ批評「逆にラジオ」第4回

「おもしろくてあたりまえ」という壁を越える、若手コント師の傍若無人ぶり『ANNお笑いオールスターウィーク』

ann_owarai.jpgオールナイトニッポン公式サイトより

しゃべりと笑いと音楽があふれる“少数派”メディアの魅力を再発掘! ラジオ好きライターが贈る、必聴ラジオコラム。

 夏休みの終わり、やり残した宿題などうっちゃっておけとばかりに、『オールナイトニッポン』を笑いの波が席巻した。「人気お笑い芸人12組総登場! おもしろくてあたりまえ!」という、恐ろしく逃げ場のないキャッチコピーを引っ提げ、『オールナイトニッポン45周年 お笑いオールスターウィーク』というこれまた大仰な名のもとに、8月27日(月)~9月1日(土)の一週間、ニッポン放送の深夜帯は芸人の声で埋め尽くされた。

 いま現在、レギュラー編成されているナインティナイン、Hi-Hi、オードリーに加え、千原ジュニア、ハライチ、サンドウィッチマン、バカリズム……というラインナップを見ると、「特別な一週間」というよりはむしろ、「なぜ最初からこの人たちをレギュラーにしなかったのか?」という印象を受ける。この並びこそが、数多のお笑い芸人を育ててきた、本来あるべき『オールナイトニッポン』の姿なのではないか、と。 

 番組を聴き進めていくにつれ、それは確信に変わると同時に、お笑い芸人がラジオをやる難しさも浮かび上がらせる。最大の問題は、今回のキャッチコピーにもなっているように、「おもしろくてあたりまえ」という感覚である。これはもちろん、土曜の大トリを担当したCOWCOWのネタ「あたりまえ体操」から持ってきたコピーだが、芸人のラジオを聴く際のリスナー側の感覚を的確に表してもいる。放送の中で、千原ジュニアやバカリズムら多くの芸人が、このコピーの「ハードルの上げ具合」に関してツッコんでいたが、これは局側の無茶振りでもなんでもなく、実際に芸人ラジオのリスナーが潜在的に設定している厳しいハードルを言い当てているに過ぎない。

 逆にいえば、いま多くのラジオ番組がミュージシャンや声優をパーソナリティーに選んでいる理由の一つもここにある(もちろん「固定ファンを連れてこられる」という理由が第一だが)。芸人以外には、この「おもしろくてあたりまえ」というハードルが、リスナーの中に設定されていないのである。おもしろければそのほうがいいのは当然だが、それがあたりまえだとは思われていない。ミュージシャンや声優は、おもしろいことを言うプロではない。普段はあまり素のしゃべりを聴く機会のないミュージシャンや声優が身近な話をすれば、それだけで充分価値がある。しかも、彼らには声質という武器がある。もちろんデーモン小暮や大槻ケンヂなど、芸人に勝るとも劣らぬおもしろさを発揮するミュージシャンが時に出現するが、近年その確率はけっして高くない。

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