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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.186

“世界的な絶滅危惧種”である独裁者に愛の手を!? 政治ネタ&下ネタ満載コメディ『ディクテーター』

dictator03.jpg大富豪を相手に荒稼ぎするハリウッドセレブ
役でミーガン・フォックスが出演。ロボット映
画を降りて、こんなことをやっていたとは!

 身分の高い雲上人が、小市民の生活を体験する中で“愛”というプライスレスな宝物を見つけるという現代版『ローマの休日』としてロマンチックに展開する『ディクテーター』。クライマックスは、チャップリンが第二次世界大戦中にドイツの独裁者ヒトラーを痛烈に批判した『独裁者』(40)へのリスペクトに満ちた感動シーンが待っている。アラジーンがゾーイに夢中になっている間に、腹黒いタミールおじさんはサミットの席上でノータリンなアラジーンの影武者に民主化宣言の宣誓書にサインをさせようと企む。ワディヤ共和国を民主化させることで石油利権を米国や中国の巨大企業に売買し、莫大な私有財産を手に入れようとしていたのだ。アホでバカで差別主義者のアラジーンだが、自分の国が民主化されてアイデンティティーが失われることは身を挺して防ごうとする。変人が変人ならではの驚異的な特殊能力を発揮する。サミットに乱入したアラジーンは、世界各国がテレビ中継する中で高らかに独裁主義の素晴らしさを訴える。アラジーンの間違ったこの演説が、異常なまでに熱くて感動的だ。

dictator04.jpgNYに来たアラジーンは、デモに参加していた自
然食品店の店長ゾーイとの恋に陥る。愛は独裁
者の心まで変えてしまうのか。

「独裁の何が悪いというのですか? もしも、アメリカが独裁国家だとしたら、国民の1%にすべての富を集めることができる。金持ちへの税金を減らしてもっと金持ちに、損をしても救済措置を行なえる。貧乏人の健康と教育など気にしなくていい。メディアも自由の名のもと、一族で牛耳ることができる。盗聴や捕虜虐待に不正選挙もできる。理由をでっちあげて、戦争だってできる。同じ人種ばかり逮捕してもいい。メディアを使って国民の不安を煽り、たとえ国民に不利な政策でも支持を得られる。そんな国にこのアメリカがなるなんて、ありえないでしょう!」

 アラジーンという変人キャラクターを通して、超インテリ芸人サシャ・バロン・コーエンは民主主義を隠れ蓑に米国が世界を牛耳る独裁国家になってしまったことを逆説的に指摘する。

 大企業の利権が最優先される超大国アメリカに、ドンキホーテさながらにたった1人で立ち向かうアラジーン将軍。果たして、この無謀な戦いに勝利することはできるのだろうか。ただひとつ言えることは、彼は決して一方的な敗者ではないということ。ゾーイというワキ毛ボーボーだけど、掛け替えのない宝物を手に入れたのだから。
(文=長野辰次)

dictator05.jpg

『ディクテーター 身元不明でニューヨーク』
製作総指揮/アダム・マッケイ 製作・脚本/サシャ・バロン・コーエン 監督/ラリー・チャールズ 出演/サシャ・バロン・コーエン、アンナ・ファリス、ベン・キングスレー、ジェイソン・マンツォーカス、ジョン・C・ライリー、ミーガン・フォックス R−15 配給/パラマウント ピクチャーズ ジャパン 9月7日(金)よりTOHOシネマズ六本木ほか全国順次公開 http://www.dictator-movie.jp 
(c)2012Paramount Pictures,All Rights reserved.

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