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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.186

“世界的な絶滅危惧種”である独裁者に愛の手を!? 政治ネタ&下ネタ満載コメディ『ディクテーター』

dictator02.jpgアラジーン将軍、NYへ見参。「米国は黒人が作り、
中国マネーが支える国」なんて毒舌ぶりが楽し
めます。

 自国で好き勝手やっていたアラジーンだが、国連が核ミサイルの開発疑惑に懸念を抱き、「サミットで釈明せよ。さもなくば空爆するぞ」と脅してきた。ここは一発、独裁主義の素晴らしさを米国人相手にスピーチしてやろうじゃないのと、アラジーンは秘密警察の長官であるタミールおじさん(ベン・キングスレー)や自分に瓜二つな影武者を伴っていざ渡米。金正日の“喜び組”か“カダフィガールズ”を思わせるセクシーな女性コマンドーたちを引き連れてのパレードでNYを沸かせる。ところが宿泊先の高級ホテルでアラジーンは何者かに拉致され、自慢のヒゲを剃られてしまった。これではホクロのない千昌夫かノーメイクの浜崎あゆみのように誰なのかさっぱり分からない。いくら「オレはワディヤ共和国の将軍さまだ!」と主張しても、米国ではただの頭のおかしい人状態。NYでいきなりホームレスとなったアラジーンを不憫に思ったのは、難民支援をしている人道主義者の女性活動家ゾーイ(アンナ・ファリス)。行き場のないアラジーンは、ゾーイが経営している自然食品店で働き始める。

 現代的な女性ゾーイは、ショートヘアでおっぱいも大きくない。その上、わき毛がボーボー。保守的な女性観しか持ち合わせないアラジーンから見れば、セクシャルな魅力がまるで感じられない。ところが気に喰わない人間に向かって「お前、処刑しちゃうぞ!」と罵るアラジーンに対して、ゾーイは「面白いジョークを言う人ね」とケラケラと笑う。これまでのアラジーンが知っている、取り巻きたちの愛想笑いとは異なるとても自然な笑顔だ。屋上農園で一緒に汗を流すうちに、アラジーンはおっぱいの小さいゾーイの魅力に惹かれていく。宮殿にいた頃の“自由”とゾーイの店で働き始めてから感じる“自由”では、ずいぶんと意味合いが違う。独裁者が手に入れた初めての平穏な時間。つい数日前まで人を人と思わぬ暴君だったアラジーンが、『ローマの休日』(53)のアン王女(オードリー・ヘップバーン)に重なって見えるから不思議です。

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