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盛り上がりを見せる脱原発デモの行く末は? 成田闘争に見る、“未決着”市民運動の現在

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 毎週金曜日、首相官邸前には数万人ものデモ参加者が足を運び、「脱原発」の声を上げている。8月にはデモ主催者が野田佳彦首相と面会するという快挙を達成し、日本における市民運動が新たな局面を迎えたことは広く報道された。

 しかし、複雑な思惑が入り乱れる原発問題が、早晩の解決を迎えるとは言い難い。現に、原子力の安全規制を担う新組織「原子力規制委員会」の人事は相も変わらず原子力ムラからの人選が濃厚となっているし、産業界では“脱原発は経済に悪影響を及ぼす”との声が強い。仮に野田首相が言う「脱原発依存」が正式に閣議決定されたとしても、避難生活を強いられている福島の人々は、場合によれば数年、あるいは数十年にわたって故郷を追われる。彼らが故郷に戻れる日が来るまで、原発問題は続いていくのだ。長期化するにつれ、現在盛り上がりを見せる脱原発運動はどのような形になっていくのだろうか……。

 そのヒントとなる運動が、日本の玄関口である千葉県・成田空港で展開されている。

 年間18万回も航空機が離発着し、旅客数は2,800万人を数える成田空港。いまやアジア有数の大空港であり、交通だけでなく物流の拠点としても欠かすことはできない。だが、この成田空港の内側に「民家」があることを知っている人はあまり多くないだろう。空港の内側に取り残された東峰地区、天神峰地区にこの民家は点在している。道路標識を見ると、「空港整備区域」と表示され、矢印は示されていないものの、地図を見ればしっかりと道が続いているようだ。

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 空港の外側から、きれいに整備されたトンネルを潜り100メートルほど進むと、ぱっと視界が開けてくる。そこに現れるのは、雑木林に囲まれたいくつかの民家と野菜畑。四方を取り囲む塀のすぐ向こうは成田空港の敷地内であり、常に飛行機の轟音が響き渡っている。「第3誘導路粉砕!」という看板とともに、ここで生活を送っている人々がいる。

 この奇妙な風景が生まれた原因は、40年以上前の活動にさかのぼる。

 成田空港は「三里塚御料牧場」と呼ばれる皇室の広大な土地を払い下げられて、1960年代より建設が開始された。この土地を利用して40%の敷地は獲得できたものの、あと60%を得るためには、そこに住んでいた千数百人の人々を移転させなければならなかった。空港予定地の周囲では反対運動が噴出し、計画も二転三転。1966年に、政府は地元の合意も得ないまま、空港建設地を現在の三里塚・芝山地区に決め、強引に計画を推進することとなる。だが、当然この強硬な土地買収がうまくいくはずもなく、住人と政府側との軋轢は広がるばかりだった。

 この新空港反対運動に、東京などの都市から学生や活動家らが参加するようになると、事態は混迷を極めてゆく。機動隊との衝突、過激派による放火事件、さらにはセクト間のいざこざなど、反対運動は激化の一途をたどる。三里塚闘争とも成田闘争とも呼ばれるこの運動の結果、警察・市民合わせて6人もの死者を出してしまった。

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