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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 障害者の性処理も介護の重圧も、すべて笑い飛ばせ! 男たちのバリアフリーな友情ドラマ『最強のふたり』
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.185

障害者の性処理も介護の重圧も、すべて笑い飛ばせ! 男たちのバリアフリーな友情ドラマ『最強のふたり』

saikyonofutari2.jpg改造した電動車椅子で街を爆走する
フィリップと介護人のドリス。せっかくの
人生、楽しんだもん勝ちですよ。

 学歴のないドリスだが、好奇心だけは異常に旺盛。ハングライダーの墜落事故で首から下が全身麻痺状態のフィリップに対し、「本当に痛みを感じないのか?」とフィリップの足に熱湯を注いで確かめてみる。雇用主を雇用主と思わぬドリスの行動に、フィリップ家の使用人たちは慌てふためくが、当のフィリップはドリスの無邪気さを新鮮に感じる。その一方、ドリスは夜中にフィリップがうなされているのに気づき、朝まで寄り添う。痛みを感じないはずのフィリップだが、“幻想痛”にときどき悩まされるらしい。医者でもセラピストでもないドリスが横にいても、フィリップの痛みが和らぐわけではない。そこでドリスは車椅子を押して、フィリップに外の新鮮な空気を吸わせようとする。車椅子の男2人が日の出前の真っ暗なパリ市街をあてもなくさまよう。このシーンが素晴らしい。スラム街出身で複雑な家庭で育ったドリスは、これまでに幾度も眠れないまま朝を迎えたことがあったのだろう。医療や介護知識はないドリスだが、眠れない夜をひとりぼっちで過ごす辛さはイヤになるほど知っている。使用人ではなく、コドクの辛さを知るひとりの仲間としてフィリップと一緒に朝を迎える。男2人が眺めるパリの朝焼けが美しい。このとき、電池のプラス極とマイナス極のように一生顔を合わせることのなかったはずの2人の間に友情という名の回路が結ばれ、明るい希望の灯りがポッとともされる。

 実話をベースにした本作だが、介護をテーマにしていると思えないほどあけっぴろげなエピソードが満載だ。ドリスに勧められて、フィリップは大麻を嗜むようになる。「あっちのほうはどうなんだい?」とドリスはズケズケとフィリップに下半身事情を尋ねる。フィリップは首から下が麻痺状態だが、幸いなことに耳が性感帯らしい。ドリスに呼んでもらった風俗嬢にねっとりと両耳を責められ、フィリップは超ご満悦。さらにドリスは電動車椅子をカスタマイズして、高スピードが出せるようにする。風を切って走る電動車椅子に2人乗りしたフィリップとドリスは、あまりの気持ちよさに少年のようにゲラゲラと大笑いする。タブー視されがちな“身障者の性”など下半身の問題をコメディとして掘り下げていく作風が心地よい。

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