涼感効果もバツグン!? 極寒の地・アラスカで生死をさまようサバイバル『THE GREY 凍える太陽』
#映画
今週紹介する新作映画は、ゾクゾク来る極寒のサバイバルを描いたハリウッド製アクションと、維新の時代に流浪人となった剣客が熱く闘う和製活劇。一見、好対照な2本だが、いずれも「生きるとは、命とは」と観客に問いかけてくる作品だ。
8月18日公開の『THE GREY 凍える太陽』は、主演リーアム・ニーソン、監督ジョー・カーナハン、製作リドリー&トニー・スコットという『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』(10)の体制で挑んだサバイバルアクション。石油採掘現場の作業員たちを野生動物の攻撃から守るため、射撃手として雇われているオットウェイ(ニーソン)は、最愛の妻に去られた後生きる意味を見失っていた。そんな彼と作業員らを乗せた飛行機が吹雪に遭い、アラスカの雪山に墜落。生き残ったオットウェイと6人の男は、極寒の地を脱出するため、南を目指して歩き出す。だがそれは、凶暴なオオカミとの壮絶な戦いの始まりでもあった。
舞台出身の演技派だが、50代後半になって『96時間』(08)、『アンノウン』(11)など体を張った主演作で新境地を開いているリーアム・ニーソン。ただし今作で彼が闘う相手は、過酷な大自然。カナダの人里離れた山中で敢行されたロケで、外気零下20度、猛吹雪が吹き荒れる中、ほかの共演者やスタッフらと共に文字通り体当たりで臨んだ。極限状況に置かれて「生」を見つめ直すニーソンの鬼気迫る演技は必見。人間に対峙する凶暴で狡猾なオオカミの撮影は、訓練された本物の動物とアニマトロニクスを極力使い、CGは補助にとどめることで迫真性を高めた。日本人カメラマンのマサノブ・タカヤナギによる臨場感あふれる映像で、見る者の体感温度を確実に下げる本作。真夏に公開される日本では涼感効果もバツグンだ。
8月25日に封切られる『るろうに剣心』は、90年代に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された人気漫画『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚』を実写映画化した新感覚の娯楽アクション。動乱の幕末、“人斬り抜刀斎”として恐れられた緋村剣心(佐藤健)は、明治維新以後「殺さずの誓い」を立て、日本中を流浪していた。刃と峰が逆の「逆刃刀」を携え東京を訪れた剣心は、亡き父から道場を継いだ薫(武井咲)と出会う。剣心は、アヘン密売で得た資金で世界制覇を企む実業家・武田(香川照之)と護衛の鵜堂(吉川晃司)らから薫や町人たちを守るため、圧倒的に不利な戦いに臨む。
メガホンをとったのは、NHKドラマ『ちゅらさん』『ハゲタカ』『龍馬伝』を演出し、劇場版『ハゲタカ』(09)も手がけた大友啓史監督。大河ドラマ『龍馬伝』で“人斬り以蔵”こと岡田以蔵を演じ鮮烈な印象を残した佐藤健は、大友監督をはじめ製作陣にとって剣心役のベストチョイスだっただろう。アクション監督には、香港で経験を積み『孫文の義士団』(09)など海外作品も手がけてきた谷垣健治を起用。役者生命を賭けて斬り合いを猛特訓したという佐藤ほか、主要キャストがほぼすべてのアクションシーンを自ら演じてリアルさにこだわり、伝統的な殺陣にワイヤーアクションを取り入れた新鮮なチャンバラ活劇が完成した。共演に蒼井優、青木崇高、江口洋介といった個性派が揃い、ドラマ部分では、激動の時代に「どう生きるか」を問い直すことの重要性を説く。原作漫画のファンはもちろん、予備知識がない観客でもしっかり楽しめる痛快なエンタテインメントだ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『THE GREY 凍える太陽』作品情報
<http://eiga.com/movie/57260/>
『るろうに剣心』作品情報
<http://eiga.com/movie/56790/>
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