新築の9割売れ残り?人気エリアでもマンションが売れないワケ
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たとえばプロゴルファーの石川遼がCMに登場する「ザ・パークハウス晴海タワーズ」「プラウドタワー東雲」といった目玉物件でさえ、業界関係者からは売れ行き好調といった声が聞こえてきません。さらに、晴海の南側に、ゆりかもめの「市場前」という今はほとんど利用者がいない駅があります。ここは築地市場の移転先とされており、周辺にマンション建設計画が浮上しているのです。このエリアだけでなく、数カ月から半年先には、新たな物件が市場にジャカジャカ供給されていきそうです。政府の政策や業界の意識が変わらない限り、将来的にも明らかな供給過剰になっていくでしょう。
――「マンション買い時」ではない。これから、ますますマンションは供給過剰が続くというのだ。榊氏の最新刊『磯野家のマイホーム戦略』(WAVE出版)によれば、人口減少社会で、20年後の空き家率は20~30%の間。25%だとしても、08年の空き家率のおよそ2倍。住宅4戸に1戸が空き家になってしまうというのだ。
私が申し上げるのは「今は(新築物件は)買い時ではありません。そして、これからもずっと『買い時』なんて来ません」ということ。かつて家が足りない頃の記憶を引きずっていた、今の40代以降の人々は、多少の無理をしてでも住宅を買いました。その結果、多くの人々が住宅ローンに苦しんでいます。ところが、物心ついた時からずっと不況だった今の30代は、「無理をしてまで家を買う」というマインドが薄く、実際、多くが買っているとは思えません。
建築技術は格段の進歩を遂げ、今の住まいは木造一戸建ても鉄筋コンクリートのマンションも、20~30年くらいなら建て替えが必要なほどの老朽化はしない。つまり日本全体で見て住宅自体が市場で大幅に余ってしまうことが考えられるのです。人口ピラミッドを見ても、これから先、マンションを購入するボリュームゾーンである30代に、ピラミッドの山が生まれることは当分なさそうです。つまり、住まいを必要とする需要はこの先、ずっと先細るわけです。ならば、デフレ期には組んではいけないという住宅ローンをわざわざ組んで、あえて、業者の広告費が上乗せされた新築物件に住もうという人がどれだけいるでしょうか。
東日本大震災後は、人々の意識も大きく変わり始めている。また次なる大地震がいつ発生するかもわからない。こうしたリスクの多い時代に新築の資産を持つ人がどれだけいるだろうか。これまでのように住宅を次々に建設させて景気回復を導く、その負担は庶民の住宅ローンで……といった持ち家政策はすでに破綻している。人々の意識の変化に政府やマンション業界が気づくのはいつだろうか?
(構成=松井克明/CFP)
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