トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > その他 > サイゾーpremium  > マラソン界はジレンマだらけ……企業に依存して勝てない! 駅伝に殺されたマラソン界
スポンサー依存のマラソンがメダルを穫れなくなった理由

マラソン界はジレンマだらけ……企業に依存して勝てない! 駅伝に殺されたマラソン界

■スポンサーに多様化を! 希望は個人援助サービス

 そんな中、今後必要になってくるのが、選手活動の多様化だ。企業スポーツへの支援を行う大崎企業スポーツ事業研究助成財団の事務局長、籏野俊彦氏はこう話す。

「実業団チームに代わって増えてきているのが、クラブチーム型と社団法人型。企業がチームを保持するのではなく、共にスポンサーの協賛によって運営されており、まだまだ可能性を秘めている」

 このクラブチーム型とは、個人会費や後援会組織、支援企業などからの広告収入、地元自治体からの支援などにより運営すること。社団法人型は、チームそのものを法人化してしまうというものだ。陸上では、日本実業団陸上競技連合がクラブチームにニューイヤー駅伝本戦への出場を許可しないなど、まだまだ保守的な状況だが、海外においては五輪メダリストを輩出する陸上のクラブチームも多数存在している。今後、スポンサーとの関係に選択肢を増やしていける可能性は、十分にある。

 その意味で、代表入りを果たした藤原は、新しい選手のあり方を力ずくで認めさせたといってもいいだろう。そもそも彼は、JR東日本の実業団選手だったが、10年、マラソンに専念するために退部。その後、健康器具販売会社レモシステムとスポンサー契約を結んだものの、同社の経営悪化により給与の未払いが起こり、契約を解除されている。しかし、それからも、定収入はないながら無所属で競技を続け、今年の東京マラソンで準優勝を果たし、見事、ロンドン五輪代表の切符を手に入れたのだ。

 さらに、その東京マラソン後、藤原は動画配信サイト・ニコニコ動画と組んで個人スポンサーを募集。あっという間に定員の2万人を達成し、およそ1000万円の活動資金を得ることができた。個人がインターネットを通じて自分の活動に対する援助を受けるこうした仕組みは「クラウドファンディング」(以下CF)と呼ばれ、アメリカなどでは盛んに行われている。スポーツ選手の支援については、過去海外にも例がなかったが、実業団だけに頼らない今後のマラソンを考える上で、有効な方法になるのではないか。国内でスポーツ選手向けのCF「Cofter」の準備をしているDolphinon&companyの代表、丹野裕介氏は言う。

「トライアスロンやフェンシングのように、日本でマイナーなスポーツだとお金がなくて海外の遠征に行けなかったり、明日の試合にも出られないような世界ランカーが、実はたくさんいます。アルペンスキーの皆川賢太郎さんでさえ、10年の五輪出場直前に、スポンサーに困っていた事もあります。五輪選手ですら、企業から100万円スポンサードしてもらうのはとても大変なことなんです。しかし、それが1000人から1000円ずつだったら可能かもしれない。そういう思いから、このサービスの本格稼働を目指しています」

 これらのサービスが今後どのように支援金を集めていくか、まだ先は見えない。しかし、これが機能すれば、新しいプロアスリートの形が生まれる可能性もある。さらに、「実業団がマラソン選手を社員として抱えるのではなく、いちスポンサーとして多少のお金や練習場、培ったノウハウを提供し、その上で選手がCFを活用できるようになるといいと思う。そうしたら、お互いにメリットが出てくる」(元実業団選手)かもしれない。

 とはいえ、企業に支援されて当たり前という環境でやってきた日本のアマチュアスポーツ界は、果たして変われるのか。当特集【2】から現場の生の声を聞きつつ、その問題の核心に迫っていきたい。

(文/大熊 信)

【「サイゾーpremium」では他にもオリンピック関連記事が満載!】
藤原新に女医のスポンサードあり 実業団陸上選手たちの不満が爆発! 実業団選手の”本音”座談会
天才ランナーの中山竹通が辛辣な苦言を呈す「実業団依存のマラソン界は、もう勝てるわけがない!」
猫ひろし騒動で露呈した国籍変更問題 五輪出場で国籍を変える選手たちの悲哀

1lineimg.jpg

「サイゾーpremium」とは?
雑誌「サイゾー」
のほぼ全記事が、
月額525円読み放題!
(バックナンバー含む)

最終更新:2012/08/12 09:30
12
ページ上部へ戻る

配給映画