“校内格差社会”に出現した異分子(ゾンビ)たち! 青春のカタルシス『桐島、部活やめるってよ』
#映画 #パンドラ映画館
中の屋上。桐島を捜す運動部や帰宅部がぞろぞ
ろと現われ、不穏な空気が満ちていく。
原作にはないクライマックスを用意した吉田監督自身、学生時代は8ミリカメラを手にした青春を送っていた。鹿児島で過ごした中学・高校の頃はパンク・ニューウェーヴに傾倒していたという吉田監督だが、大学進学時に石井聰亙(現・石井岳龍)監督の『爆裂都市』(82)に衝撃を受け、映画サークルで自主映画製作を始めた。「ボクが作った第1作のタイトルが『爆裂家族』。もろに『爆裂都市』の影響を受けています(笑)。大学時代は合計3本作ったんですが、最初の『爆裂家族』がいちばん評判が良かった。きっと初期衝動だけで作ったのが良かったんでしょうね。学年が上がるにつれ、『褒められたい』という意識が働き、つまらなくなった(苦笑)」と吉田監督は学生時代を振り返る。大学卒業後はCMディレクターとしてキャリアを積んでいった吉田監督だが、監督作である『腑抜けども』や『クヒオ大佐』(09)『パーマネント野ばら』(10)には常識からはみ出した人間のパンク精神、アナーキーさが息づいている。パッと見は人気若手キャストを配した爽やかな青春映画である『桐島、部活やめるんだってよ』も、その根底には実に不穏なエネルギーが蠢いている。
ゾンビの出現と同時に“繭”を突き破った前田たち。彼ら・彼女らが校舎の屋上から見渡した校外の風景は、それまでの慣れ親しんだ景色とはずいぶん違ったものに見えたはずだ。
(文=長野辰次)
『桐島、部活やめるってよ』
原作/朝井リョウ 脚本/吉安浩平、吉田大八 撮影/近藤龍人 監督/吉田大八 出演/神木隆之介、橋本愛、東出昌大、清水くるみ、山本美月、松岡茉優、落合モトキ、浅香航大、前野朋哉、高橋周平、鈴木伸之、榎本功、藤井武美、岩井秀人、奥村知史、太賀、大後寿々花
配給/ショウゲート 8月11日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー <http://www.kirishima-movie.com>
(c)2012「桐島、部活やめるってよ」製作委員会
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