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アルバム『リトルメロディー』発売記念インタビュー

「『圏内の歌』は避難勧告の歌じゃない」言葉にならない無数の歌と向き合った七尾旅人の500日

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――なるほど。確かに七尾さんのライブは、サプライズの連続ですよね。毎回、「今日はどんなことをやってくれるんだろう」というワクワク感があります。では最後に、震災後のさまざまな感情を吐き出した今回のアルバムは、七尾さんにとってどんなアルバムですか?

七尾 今回のアルバムは、自分の表現の一番コアな部分を取り戻していくためのプロセスのひとつだと思うんです。前作『billion voices』のときはいろいろなことに恵まれていたので、自分もノリノリで、すごく明るいアルバムだったんです。「DIY STARS」の立ち上げなどいろいろなことが同時に起こって、みんなCDが売れないってすごく悲壮感が漂っていたけれど、僕は「今が一番楽しいよ。確かに20世紀のポップシステムは壊れたけど、ポップミュージックまで壊れたって言うのやめてくれる?」って思っていたんです。「僕より年下の10代とか20代のやつが今どんだけ面白いことやってるか知ってる? 知りもしないクセに、『若いやつがやってることはつまらない』とか言うなよ」って。だから、意図的にああいうジャケットにして、コンセプチュアルにまとめたんですが、翌年の3月11日でガラッと世の中が変わってしまったから、それまでに考えていた次作のアイデアを全部捨てたんです。それでこういうアルバムになった。そういう意味では、『billion~』とはかけ離れている。『911』とか昔のアルバムに近いのかもしれない。挫折感もあったし、いろんな軋轢とかある中で、もう一度自分を組み立て直そうとしたプロセスだと思うんです。

 ある種の公共性を伴った曲もあると思うけれど、僕としてはすごく自己表現をやりたかった。こういうときだからこそ、そういうことをやらないと前に進めないと思った。先に行けないなって。こういうことを歌ったら誰かを傷つけてしまうんじゃないかとか、1円でも多く義援金を集めたいという気持ちは今でもぜんぜん消えていないんですけど、このアルバムに関しては、やっぱり表現者として生きて死んでいくわけだから、善も悪も超えて、自分が本当に歌いたいことを歌ってみると。そういう意味ではすごく、自分にとっては大事な作品ですね。
(取材・文=編集部)

●ななお・たびと
シンガーソングライター。1998年のデビュー以来、驚異の3枚組アルバム『911 FANTASIA』や、新世代のフロアーアンセムとも称される「Rollin’ Rollin’」、21世紀の新しい音楽の可能性を感じさせる『billion voices』などで旋風を巻き起こす。唯一無二のライブパフォーマスは必見。自身のライフワークと位置付け、全国各地で開催してきた弾き語り独演会「歌の事故」、全共演者と立て続けに即興対決を行う「百人組手」の2つの自主企画を軸に、各地のフェス、イベント、USTREAMでも伝説的なステージを生みだし続けている。

公式ブログ< http://tavito.net/>
Twitter <https://twitter.com/#!/tavito_net>

最終更新:2016/07/06 17:43
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