誤審や買収疑惑で国中からバッシングを受けることも──協会も守ってくれない審判の弱さ
#オリンピック
各協会や連盟が五輪に審判を派遣する際、経験や実績を考慮していることは間違いないが、細かい条件を明文化していることは少なく、選定の経緯ははた目にはわからない。このことが審判買収や密約の疑惑が噴出する一因となっていることも否定できない。それに加えて誤審や買収が問題視された際には、出場停止などといった厳しい処分を審判に課すだけで一件落着とする場当たり的な対応が横行。審判の質が向上しないのには、こうした協会側の体質にも原因があるように思われる。
システムや待遇が変わらないまま、プレー技術の高度化や五輪商業化によって、多くのことを求められるようになった審判。そんな中で、一筋の光明というべきある流れが、世界的に出始めていると、前出の友添氏は言う。
「こうした現状を受け、審判の育成、技術向上に対する取り組みが本格化しようとしています。アメリカの審判学校やサッカーのライセンス制度が有名なところですが、五輪競技もどんどん”審判のプロ化”が進んでゆくのではないかと見ています。10年にはIOCが、本来、五輪が持っていた国際親善やスポーツによる人間育成という原点に立ち返ろうと、青少年たちのためのユース五輪を開催し、成功を収めました。五輪の根本を見つめなおすことにより、一層のフェアプレーが求められ、ひいては審判という存在も重要視されるようになっています。このロンドン五輪が、ひとつの転換期になるのではないでしょうか」(友添氏)
これまで、待遇の悪さを甘んじて受け入れてきた審判に対して、ようやく制度改革の波が世界中のスポーツ界に押し寄せようとしている。時代に応じた変化を続ける現代の五輪において、度々勃発する”審判”をめぐる問題は、旧態依然たる”審判”という制度と今の五輪の間にあるズレによって引き起こされたといえるかもしれない。IOCをはじめとする各団体は、”審判”について今一度考えるべき時期に差し掛かっているのではないだろうか。
(文/高橋ダイスケ)
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