「非実在青少年」騒動はなんだったのか? “消していれば大丈夫”という判断をした青林堂の甘さ
#マンガ #出版 #青少年育成条例 #非実在青少年
と話す、しろみ氏。指定を受けたことも驚きだが、作品をズタズタに切り裂くがごとき「消し」には、本人も戸惑ったという。いったい、なぜこのような事態になってしまったのか?
しろみ氏に、同人誌を商業出版しないかという依頼があったのは、昨年の夏頃。当初は「デジタルで」という話だったので、デジタルにあまりよい印象を持たないしろみ氏は「単行本ならいいですよ」と、印刷物としてなら了承するという条件を出したところ「なら、そうしましょう」と、話がまとまったという。
「もともと同人ベースで出していて、商業ならばもっと修正がめんどくさいんじゃないかと思っていた作品でした。それに、美少女系……エロ系を、自分の前には一冊しか出版していない青林堂で本当に大丈夫かな? とは思っていたんですけど」
しかも、たぐいまれなひどい修正をしろみ氏が知ったのは、なんと献本が来てから。なんでも、校正刷りと献本が「ほぼ同着くらいだった」というから、これまた驚きだ。さらに、一番の問題である18禁マークを付けていない件についても聞いてみると、説明があったか少々記憶が曖昧だとしながら、次のように話す。
「18禁マークを付ける・付けないという話は、確かにされた記憶があります。ただ、これがエロ漫画の中でも濃厚な描写に特化した作品であることは、ヒロインのマリカとアキコのメス顔や、汗と大量のザーメンが紙面中に飛び散る絵を見れば一目瞭然です。だからそれを18禁マークなしで出すとは普通思わないし、18禁を付けずに出すなら、何かそれなりに策や方法があるのだろうとは思っていました」
しろみ氏自身、もとになった同人誌では、18禁マークを付けて売っていたわけだから、当然だ。
やはり、相次ぐ現場レベルでのやり過ぎ、あるいは無知ゆえの行為を通じて感じるのは、世間を騒がせた「非実在青少年」の騒動はなんだったのかということだ。あれだけの騒動を経ても、いかにして権力による規制に対抗するか、手練手管を使って出し抜くか、退くべきところは退くかを理解していない編集者は、まだ多いということか。覚悟を決めて、意図的に権力に挑戦的な表現を用いるのであればよい。無知ゆえの過激表現なんか、なんの意味もない。
(取材・文=昼間たかし)
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