大人げない大人たちの『ウレロ☆未完成少女』という夏祭り
#テレビ #テレビ裏ガイド #早見あかり #てれびのスキマ
しかし、一部で「実現の神」とまで呼ばれる、この番組の演出兼プロデューサーの佐久間宣行は、そのハードルを次々突破。ファン、スタッフ、出演者全員が望む最高の形のまま、まさかの1年を待たずしてのシーズン2開始。それはまさに奇跡だった。
『ウレロ』の魅力は数多くあるが、その最大の“発見”は早見あかりだろう。日本屈指のコント師を向こうに回して、堂々たる立ち居振る舞い。コメディ女優としての高い能力を見せつけた。大女優と呼ばれる人には必ず、圧倒的な輝きを見せる旬な時期があるといわれるが、キラキラして瑞々しい、そしてどこか危うい魅力を放っている今の彼女は、まさにその直前なのではないだろうか(すなわち、一番見ておくべき時期だ)。ももクロを辞めて、いつもそばにいた仲間を失った早見あかり。その隙間に『ウレロ』というチームがぴったりとハマった。だからシーズン2が実現した時のうれしそうな表情ったらなかったし、彼らに鍛えられて、いつの間にか大ボケまでこなすコメディエンヌになっていた。
シーズン2開始にあたり、その舞台設定は徹底して隠されていた。シーズン1と同じアイドル芸能事務所のまま続けるのか、あるいはメンバーだけそのままで違う設定にするのか――。シーズン1の最終回に合わせて行われたニコニコ生放送の『ウレロ』実況では、出演者たちはシーズン2が実現したらどのような設定にするのかという話で盛り上がったが、その場で実施された視聴者アンケートでは、「探偵事務所」という設定案が僅差でトップだった。
いよいよ番組が開始されるも、その設定がなかなか判明しない。何やら「事件」のにおいを漂わせつつ、やがてハードボイルドな衣装をまとった豊本(東京03)が「@豊本探偵事務所」という看板を持ち込むと「今度はやっぱり探偵か!」と僕らが思った刹那、川島(劇団ひとり)の「豊本は元スパイ」という前シーズンの設定とつながるセリフに、頭の中が一瞬で「?」に。そして、この番組で「武闘派」として新境地を切り開いているバカリズムが「ここは芸能事務所だろ!」と看板を叩き割ると、ついに正真正銘、前作の「続き」だということが分かるのだ。見事に騙された。うれしい裏切り。しかも第1話では物語の進行とともに、ちゃんと探偵設定まで生かして「事件」も解決する巧妙な構成。続編ということでキャラクターの輪郭が最初から鮮明なため、全員が躍動していた。あの楽しかった前作のまま、いや間違いなくパワーアップして『ウレロ』が帰ってきた! そう思わせてくれる第1話だった。
このシーズン2を熱望するあまり、劇団ひとりは「実現できなかったら丸坊主ね!」とプロデューサーに迫り、バカリズムは「まだ撮ってない(『ウレロ』用の)コントがあれば終わらないと思って」と必要以上のコントを書いてきたという。
なんという大人げなさ。けれど、そんな大人げなさは本気になった大人だけの特権である。
「みんなといると超楽しいんだけどー!」と、みんなが「青春バカ」状態に陥る『ウレロ』。シーズン1がプロが作った学園祭なら、シーズン2はさながらプロフェッショナルたちの夏祭りだ。祭りへの参加資格はただひとつ。大人げなく全力で楽しむ。それだけだ。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
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