「このアルバムは『はだしのゲン』の第1巻のようなもの」ソウルセット・渡辺俊美が歌う“県内の人”の歌
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結成20年を迎えたTOKYO No.1 SOULSETのギター・ボーカルであり、ソロユニットTHE ZOOT16としても活躍する渡辺俊美は、震災以降、脱原発の姿勢を強く表明している。昨年、箭内道彦やサンボマスター山口隆らとともに「猪苗代湖ズ」として紅白にも出場した彼の故郷は、福島県富岡町。福島第一原発の半径20km圏内に位置し、現在も実家には思うように立ち入ることができない。
今回、20年以上にわたるキャリアの中で初となるソロアルバム『としみはとしみ』(felicity)をリリースした彼に、日刊サイゾーではインタビューを敢行。最小限の音で作られたポップなアルバムは、アーティストとしての熟練を感じさせる仕上がりとなっている。もちろん、このアルバムの制作にも、福島出身というアイデンティティは深く関わっているようだ。
――現在、富岡町のご実家は、どのような状況になっているのでしょうか?
渡辺俊美(以下、渡辺) 一時帰宅した姉によれば、草も伸びきって、家にも虫がわいてしまった。野生動物が入った跡もあるそうです。もう一度家を建て直すのも無理かもしれないですね。
――やはり、復興は程遠い状況なんですね……。今回リリースした『としみはとしみ』では、福島で育ったアイデンティティが深く関わっているように感じました。今、あえてソロ作品をリリースする意義は、俊美さんにとっても大きなものなのでしょうか?
渡辺 大きいですね。3年くらい前から、自分とちゃんと向き合った作品を作りたいと思っていたんです。そのために、ZOOT16でもSOULSETでもなくソロアルバムという形になりました。SOULSETもZOOT16も、僕の中では“東京の音楽”という雰囲気。けれども、渡辺俊美は福島で育った人間です。その過去を見つめ直して、今故郷をどう思っているのか、これから自分がどういう選択をしてくのか、ということを歌にしたいと思ったんです。
――“選択”というのは、どういうものでしょうか?
渡辺 原発に反対するのも選択だし、推進するのも選択です。住む場所にしても、福島でいいのか、別の場所のほうがいいのか……。3月11日以降、誰もがいろいろな選択をしなければならなくなりました。僕は福島第一原発の20km圏内で生まれ育ち、音楽もやってきたし、洋服屋もやってきた。そんな自分がこの先どんな選択をしていくのか、自分でも興味があるんです。
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