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元木昌彦の「週刊誌スクープ大賞」第146回

「民主党は女子高生のようなオッサンだらけ」気鋭の論客が政治家の幼児性を一刀両断

「橋下はタレント時代に『能や狂言が好きな人は変質者』と発言している。府知事時代には文楽を見て『2度目は行かない』と述べた。文楽協会や大阪フィルハーモニー協会への補助金カット、市音楽団の廃止、中之島図書館の廃止を目指す彼は、どこに文化的な価値を見いだしているのだろうか? 橋下の好きな音楽はORANGE RANGEの『花』である。感動した小説は『いま、会いにゆきます』。好きな食べ物はラーメン。応援しているスポーツ選手は亀田興毅。一体どこの田舎の中学生か。(中略)彼の幼児性は、国家社会主義ドイツ労働党(ナチス)のアドルフ・ヒトラーと酷似している。(中略)わかりやすい正義を唱えて、『大衆の共通の敵』を作り上げ、排外主義を扇動する。市職員の『思想調査』を行い、内部告発や密告を奨励する。そして、『僕が直接選挙で選ばれているので最後は僕が民意だ』と民意による独裁を正当化する。(中略)毎日新聞の全国世論調査(6月)によると、次期衆院選比例の投票先に橋下が率いる『大阪維新の会』を選んだ人が28パーセントに上ったという。候補者が一人も決まっていないのに、全政党の中でダントツの1位。大人は総じてバカになったのである」

 橋下の文化に対する幼児性を痛烈に批判したのは、赤川次郎である。

 朝日新聞6月29日付の読書欄に投稿した赤川は「橋下氏、価値観押しつけるな」と題して、「大阪の橋下徹市長は大阪府立和泉高校の管理職をなぜ処分しないのだろう? 教師の口元チェックをしながら、姿勢正しく心をこめて『君が代』を歌えたはずがないのだから」と書き出し、こう続けている。

「それにしても生徒のためのものであるはずの卒業式で、管理職が教師の口元を監視する。何と醜悪な光景だろう! 橋下氏は独裁も必要と言っているそうだが、なるほど『密告の奨励』独裁政治につきものである。

 府知事時代、橋下氏は初めて文楽を見て、こんなもの二度と見ないと言い放ち、補助金を削減した。曰く『落語は補助金なしでやっている』。舞台に座布団一枚あればいい落語と、装置をくみ、大勢の熟練の技を必要とする文楽を一緒くたにする非常識。客の数だけ比べるのはベートーヴェンとAKB48を同列にするのと同じだ。

 文楽は大阪が世界に誇る日本の文化である。理解力不足を棚に上げ、自分の価値観を押し付けるのは、「力強い指導力」などとは全く別物である。

 過去に学ぶ謙虚さを持ち合わせない人間に未来を託するのは、地図もガイドもなく初めての山に登るのと同じ。一つ違うのは、遭難するとき、ほかのすべての人々を道連れにするということである」

 哲学者らしく随所に哲人の言葉を挿入しながら、意外にもオッサン女子高生たちに期待を寄せる。

「女子高生のオッサン化は、キャピキャピと浮かれ続ける醜悪な大人たちに愛想をつかしたからではないか。社会の幼児化に本能的な警戒心を抱いているからではないか。2012年版『子ども・若者白書』の原案によると、15~29歳の若者の8割以上が、わが国の将来について不安をもっているという。真っ当な現状認識だと思う。日本の将来を救うのは、むしろ現実から目を背けない女子高生たちもしれない」

 この見方に私は多少違和感があるが、最後に引用しているスペインの哲学者オルテガ・イ・ガセトの言葉はいい。

「過去は、われわれが何をしなければならないかは教えないが、われわれが何を避けねばならないかは教えてくれるのである」

 増税で入ってくるカネを公共事業に注ぎ込もうと企む政治家や、原発を再稼働させようと目論む電力会社、そして多くの日本人は、過去から何も学ぼうとしない。日本人はどこまでバカになるのだろう。
(文=元木昌彦)

最終更新:2012/07/17 15:20
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