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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 『エレ片』は集団的笑いの境地?
ラジオ批評「逆にラジオ」第1回~あいつを笑っている俺も、きっとどこかで笑われている~

予測不能な「集団的笑い」の境地『JUNKサタデー エレ片のコント太郎』

erekata.jpg『JUNKサタデー エレ片のコント太郎』

しゃべりと笑いと音楽があふれる“少数派”メディアの魅力を再発掘! ラジオ好きライターが贈る、必聴ラジオコラム。

 『JUNKサタデー エレ片のコント太郎』(TBSラジオ 土曜深夜1:00~3:00)は、『キングオブコント2010』で上位に大差をつけ断トツの8位(決勝8組中、とはいえ総勢3,009組中)を獲得したエレキコミックの2人(やついいちろう、今立進)と、ラーメンズの「ルックス的にはラーメンズだが創作的にはラーメンズじゃないほう(=髪型はラーメンだがネタを作ってないほう)」こと片桐仁による、3人組コントユニットが送る深夜のラジオ番組である。この番組こそ、いま最も最小単位で色濃く「集団的な笑い」を実現している番組だといえる。

 では、「集団的な笑い」とは何か? それは、よりメジャーな笑いのフィールドであるところの、テレビの世界を席巻している潮流である。『エンタの神様』(日本テレビ系)や『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)全盛の時代には、何よりも個々の強烈なキャラクターがもてはやされた。しかし、「ひな壇上の連携プレー」という型を確立した『アメトーーク!』(テレビ朝日系)が人気を博して以降、テレビの笑いは、いつの間にか集団のものになった。逆に、あまた出現していたキャラ芸人たちは集団の中で機能せず、次々と消えていった。個人技よりもチームワークの時代の到来である。ただし一方で、多くの番組が『アメトーーク!』的なスタイルを取り入れながらも、本家以上の笑いを生み出せていないという現実もある。

 一方で、実はサッカーの世界でも、近年同様のことが起こっていた。2006年に日本代表監督に就任したイビチャ・オシムは、代表選手の選考基準として「ポリバレント」という言葉を用いた。これは「1人の選手が複数の役割を担う」という意味であり、同時に彼は、「コレクティブ(集団的な)」という言葉もよく使っていた。両者はつまり同じことを意味しており、集団的であるためには、1人の選手が複数のポジションをこなす必要があるということでもある。ただゴール前に突っ立って、ボールが来たときのみ派手な個人技を披露する古典的なストライカーは、チームプレーを阻害するとして、代表から外された。ディフェンダーも機を見て攻撃参加し時にはシュートを打ち、センターフォワードも状況によってはディフェンスラインまで下がって献身的な守備をすることが求められた。今の日本代表にその哲学が受け継がれているかは正直半信半疑だが、スペイン代表はまさにそれを突き詰めた集団的フットボールで、2010年のW杯と2008/2012年の欧州選手権を制するという快挙を成し遂げた。

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