東大卒、27歳の新人監督・松本准平の劇場デビュー作として、今春話題を呼んだ映画『まだ、人間』。
#映画
話題沸騰中の黒田氏が初回舞台挨拶に登壇という告知が、劇場HPに記載された辺りから取材の問い合わせが殺到。
宣伝隊長を務める黒田勇樹氏、主演俳優の辻岡正人氏、共演者の上山学氏、宣伝プロデューサーの増田俊樹氏、主題歌を歌うチーナのメンバーたち、音楽担当の鈴木光男氏等、様々な個性派が初回の舞台挨拶を大いに盛り上げる結果を呼び、満員の場内が醸し出す穏やかな雰囲気ともあいまって松本監督もしばし安堵の表情に。
続いて、初日2回目となる舞台挨拶の際には、バグパイプ演奏後の加藤健二郎氏と軽妙なトークを展開しつつ、常に笑顔を絶やさぬ表情を見せ、直後にネット中継されたロフトチャンネルのトーク番組「ハード→ポップ!」に生出演した際には、既に余裕の表情を取り戻すまでに。
新人監督ながらも初日興行では一定以上の劇場動員に成功し、以降も効果的にバグパイプ奏者の加藤健二郎氏、女優の小滝かれんさん、出演者の上山学氏、音楽担当の鈴木光男氏、カトリック司祭である晴佐久昌英氏等と共に松本監督自らトークライヴへ参入した結果、あろうことか右肩上がりに観客動員を増やし続けて行き、奇跡とも呼べる全国規模のアンコール公開に結びついたのだろう。
一般的に、公開初日から緩やかに動員が落ちて行くことは多々あるのだが、『まだ、人間』が描く動員曲線は異例だっだ。
東京での先行劇場公開中は、業界の先達である様々な映画監督や映画プロデューサーと多くの酒席を共にし、耳の痛い注文やら執拗な叱咤激励を浴びせられ続けた松本監督ではあったが、幸いなことに業界の実力者から一目おかれた後、目をかけられる傾向が人並み以上に強いことは確かなのだが……その反面、それとは真逆に位置する不名誉な事実として、公開後にキャリア豊富な女性映画評論家から、「映画以前、作品未満」という、同情の余地すらない酷い批判を映画専門誌の紙上で全面展開されてしまい、涙を堪えて酒を呑み、増田氏やスタッフからの制止も聞き入れず、ツイッター上に夜な夜な自己弁護を書き連ねる孤独な姿に、それまで覆い隠されていた生身の脆い感性を垣間見てしまったのは決して筆者一人ではなかった筈だ。
生身の松本准平という観点から彼を見た場合、忘れられないのがテアトル梅田の舞台挨拶に同行取材した日の思い出だ。
東京での興行成績に気を良くした松本監督は、大阪での初回大入りに更に気が大きくなり、舞台挨拶後に俳優の上山学氏を誘ってミナミへと繰り出した際、戎橋で思わずキャッチ女性にまとわりつかれて上機嫌の渦中、傍らの上山氏から水を差され、通称「ひっかけ橋」と呼ばれる由来を説明されるや否や、目を見開き意地になって女性に声をかけ続けた挙げ句に、「コレ、次回作の取材ですからね」と、シラッと言い切ってしまうシャイで一途な感覚が何故か周囲に上手く伝わらぬことも多く、そんな強気一点張りの性格からも、あらぬ誤解を招いてしまうことも度々なのだ。
映画監督として生き残るには、興行的な成功を得ずしては存在意義すら危うい職能となりつつある現状において、松本監督は若い個性と努力と強運によって、やっとの思いで映画監督だと名乗れる辺りに辿り着いたばかりなのだ。
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