トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > ミラクルひかる「本物の矜持」
お笑い評論家・ラリー遠田の【この芸人を見よ!】第110回

ミラクルひかる 単なる“歌うま”と一線を画すクオリティ──そのものまねに宿る「本物の矜持」

 恐らく、ミラクルは「ものまねタレント」よりも「ものまね芸人」であるという自意識が強いタイプなのだと思う。単に似せるだけでは満足できず、自分なりの解釈や誇張を加えて、笑いどころを増やし、ときにはキャラクターが破綻するところまで暴走してみせる。そういう意味では、ミラクルは根っからの芸人気質なのだ。

 そんな彼女が、今回の『ものまね王座決定戦』ではひと味違う一面を披露した。本気のパフォーマンスで、徹底して勝ちにこだわる姿勢を見せたのだ。その裏には、自分と同じような枠の女性ものまね芸人が増えていることに対する焦りと苛立ちが見え隠れしていた。

 この日のミラクルの最高のネタは、準決勝で見せた「冬のオペラグラス」を歌う新田恵利のものまねだろう。元の歌を知っている人なら笑わずにはいられない再現性の高さ。新田のつたない歌声、微妙に外れる音程。それらを完璧に再現するという離れ業を演じたのだ。わざと下手に歌って笑わせるというのはたまにあるが、ほどほどに下手な歌をそのままほどほどに下手な状態で再現するというのはなかなかできることではない。ずば抜けた歌唱力の賜物だ。

 うがった見方をすれば、このネタは、歌がうまいというだけでもてはやされている昨今の「ものまね新女王」と呼ばれたりしている後輩芸人に対する、ミラクルなりの宣戦布告でもあるのだろう。「本物のものまねっていうのは、こうやるんだよ!」と。

 一視聴者の立場で言わせてもらえば、ものまね番組を見ていると「歌がうまいだけで別にそれほど似てはいないよね」とか、「それなりに似てはいるけど面白くはないし感動もしないよね」とか、そういうことを感じるときがたまにある。だが、ミラクルのネタにはそれがない。あふれるサービス精神、高いプロ意識、研ぎ澄まされた技術と発想力によって生み出された珠玉のものまねネタの数々。ミラクルひかるは、その負けん気の強さも含めて、ものまねに必要なあらゆる要素を持ちあわせている“奇跡”のものまね芸人だ。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)

123
ページ上部へ戻る

配給映画