親友=お金を貸してくれる、女友達=SEXさせてくれる!? 品性お下劣男の青春『苦役列車』
#映画 #パンドラ映画館
貫多(森下未来)は想いを寄せる康子(前田敦子)に露骨に迫る。
金もなければ、ムードもなし。
受賞直後のコメント「そろそろ風俗に行こうと思っていた。行かなくてよかった」で話題を呼んだ西村賢太の芥川賞受賞小説『苦役列車』が、山下敦弘監督によって映画化された。やはり、山下監督は『マイ・バック・ページ』(11)のインテリ青年よりも、『どんてん生活』(99)や『ばかのハコ船』(02)のようなどーしようもないダメ男を描くほうがイキイキしてくる。日雇い労働で日銭を稼ぎ、風俗に行くことを数少ない楽しみにしている主人公・北町貫多に『モテキ』(11)の森山未來。地方から上京してきたばかりで、都会への免疫がない日下部に若手演技派の高良健吾。貫多が惚れる古本屋の看板娘に前田敦子というキャスティングだ。汗あり、友情あり、そして汁ありの“王道”青春映画に仕上がっている。
大阪芸大出身の山下監督というと、大学時代からの盟友である人気脚本家・向井康介とのコンビで知られるが、今回はあえて定番となっている座組を変えて、ピンク映画界で活躍するいまおかしんじ監督が脚本を担当。この起用がうまくハマった。いまおか監督はデビュー作『彗星まち』(95)や林由美香主演の代表作『たまもの』(04)で青春時代の終わりを切なく描く一方、クリストファー・ドイルが撮影を担当した『おんなの河童』(11)や青春Hシリーズの一編『若きロッテちゃんの悩み』(11)などで独特のユーモアを漂わせている。原作者・西村賢太の若き日の姿である北町貫多の下品でお下劣などんぞこ生活が、いまおか流に脚色されることで青春の軽みや生きることのおかしみが加わったように思う。山下監督はいまおか監督より11歳年下だが、『たまもの』のトークイベントに呼ばれてから懇意となり、『苦役列車』で初めて一緒に仕事することになった。林由美香主演作を介して、2人の才人が出会ったというエピソードも、映画好きにはぐっと込み上げてくるものがあるではないか。
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