“映画祭監督”がド新人監督にインディーズ魂を伝授 処女作をめぐる熱きトーク60分一本勝負!
#映画 #くそガキの告白
Twitterを介した新しい関係性を築いている。
通常、同業者がひとつのテーブルに就いても、腹を割って話し合うことは少ない。お互いにライバル同士だからだ。小林政広監督自身、「映画界はパイが限られているから、ライバルを育てるようなことは誰もしない」と話す。だが、この日の小林監督は違った。ガチでマジに熱い言葉をド新人監督に向けて贈った。小林監督はこれまでカンヌ映画祭に4度招待され、中でもイラク邦人人質事件を題材にした『バッシング』(05)はコンペ部門に選ばれている。また、佐世保市少女刺殺事件にインスパイアされた『愛の予感』(07)はロカルノ映画祭でグランプリを含む4冠を受賞。海外での評価が高い“映画祭監督”だ。対するド新人監督は、デビュー作『くそガキの告白』がテアトル新宿で公開中の鈴木太一監督。自主映画を撮り続けることで映画界をサバイブする小林監督の体験に基づく言葉の数々は、鈴木監督に限らず表現活動を目指す若者たちの胸に響くに違いない。
──おふたりはTwitter上で知り合ったそうですね。
小林政広監督(以下、小林) そうです。この人(鈴木監督)は文章がうまいんです。ライターの文章は、すぐ分かる。ある程度書けるヤツかどうかは、Twitterを見れば分かりますよ。読ませる力があり、言葉の選び方がうまいんです。それで、けっこーTwitterでのやりとりをやったね。
鈴木太一監督(以下、鈴木) はい、直接お会いして話をしたのは昨年1度だけで、それまでずっとTwitterでやりとりしていました。2009年ぐらいからでしたね。映画を撮りたいけど撮れず、精神的に不安定になっている時に、ずいぶんとハッパを掛けていただきました。でも、小林監督がTwitterやっていたことに驚きましたし、「映画のことでフザけたことは呟けないな」と緊張もしました(笑)。
小林 ボクも20代、30代と映画が撮れずに悶々としている時期が長かった。テレビドラマやピンク映画の脚本を書いていたけど、シナリオライターとして認められれば認められたで、映画監督には成れないわけです。それで自分から「映画を撮る」と宣言したんだけど、それまで一緒に仕事をしていた周囲の人間はみんな引いちゃった。「撮りたいなら、撮れば」と。誰も協力してくれないし、応援もしてくれないわけですよ。誰かに背中を押して欲しいんだけど、誰も背中は押してくれない(苦笑)。なら、自分でやるしかない。ボクがデビューした頃は、フィルムで撮ると最低でも500万円、だいたい1,000万円かかった。でも、ボクはピンク映画の仕事もしていたので、35ミリフィルムを使って300万円くらいで撮る方法もある程度分かっていた。テレビドラマのディレクターに「キャスト1/3、スタッフ1/3、残り1/3」と予算の内訳も教わっていたしね。それに今はビデオ撮影がほとんど。もっと安くできる。だから、「グダグダ言わずに早くやれ!」とね(笑)。
鈴木 小林監督のその言葉は覚えています。Twitter上での発言だったんですが、明らかにオレに向けた言葉だなと分かりました。まだお会いしてない映画監督から、そんな言葉を投げ掛けられたので怖かった(笑)。でも、すごく身に染みた言葉でした。
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