「自殺者が3万人いる理由? 僕と会ってないから!」“新政府総理”坂口恭平が本気でやろうとしていること
#インタビュー
坂口 (無視して。話の勢い止まらず)ルームっていうのは、エンドルフィンという脳内物質が分泌している状態(モルヒネの主成分に似てる脳内物質)。僕の場合、基本的にそっちに重点を置いてるんですよ。
――空間を「物理的に捉える」のではなくて、「自分の感覚をベースに捉える」みたいなことですかね。
坂口 (無視して。話の勢い止まらず)「大人っていうのは、なんてもったいない空間の使い方をしてるんだ、かわいそうだな」と思って、哀れみの目で見てたんですよ。大人になって公園行くと「公園が小さくなった」って言う人いるでしょ? それ、かわいそうですよね。「小さい頃は、その公園の奥に【上野の動物園】があって、裏には【『エルマーのぼうけん』のジャングル】があって、もっと行くと【『オズの魔法使い』のエメラルドの宮殿】があったのに、お前はそれを失くしちゃったんだね」って。
──うんうん。
坂口 みんなそれを笑うわけですよ。でも、鈴木さん(*)のところに行くと、3畳間より広いんですよ。なぜならば、それを知ってるからなんです!
(*坂口恭平が大きな影響を受けたホームレス。映画『MY HOUSE』のモデル)
──自分の感覚を変えれば空間の認識も変わる、と。
坂口 鈴木さんの中には【『オズの魔法使い』のエメラルド宮殿】がある。彼は、東京の中で何もかも失ったとき、「何もない、絶望しかない」と思っていたら、全部が宝に見えた体験をした。つまりそういうふうにして、もう1個違うものが空間に付随されるようになっている。そういうものが鈴木さんの家には全部詰め込まれているから、3畳間なのに25畳ぐらいの体験をするわけですよ。
──その家はあくまで「寝室」みたいなもので、そこに接している土地や風景まで含めて自分の空間だと認識してしまえば世界が変わる、と。
坂口 それをやってたのが千利休ですから。つまり歴史的にも、常にそういうテーマでみんなやってたはずなんです。それこそ、鴨長明からずっと。そういう空間認識について僕が説明すると、みんな「わかる」って言うんですよ。なのに、なぜか不動産に行くと「何平米がいいです」ってなってしまう。
──気づいたら単一レイヤー的な思考になっている、と。
坂口 中学くらいで断ち切られてしまうんです。空間と同じく時間もそういう感覚で捉えることができるし、本当は世の中には多層なレイヤーがあるのに、単一のレイヤーで生きるように仕向けられているんです。
──でも、そういう「何かが拡張していく感覚」って、もともとは誰しも経験してるものではあるんでしょうね。
坂口 僕、昔1回だけバク転できたことがあるんです。その時の「レイヤーのめくり際を見た瞬間」を覚えてるわけですよ。あと、縄跳びで二重跳びできた時の感覚とか。できないものができるようになった瞬間の「できない自分とのサヨナラ」みたいな。自転車乗ってる奴に「自転車乗れなくて泣いてたことを覚えてる?」って聞いたら、「覚えてない」って言う。乗れなかった自分を忘れてるのは、つまり「匿名化したレイヤー」になっちゃってるってことなんですよ。
──大人になった今でも「二重跳びできた瞬間の感覚」みたいな、新しいレイヤーを獲得する感覚って経験してますか?
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