「正義は少年ジャンプの中にしかない!?」“絆”を裁く『リーガル・ハイ』の正義
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くぎ付けにさせるのは、キャラクターたちの魅力だけではない。たとえば大和田伸也と里見浩太朗が対峙し“助さん格さん”が揃い踏みすると『水戸黄門』のテーマが流れたり、オープニングのタイトルバックが毎回少しずつ変わり、全話通したムービーになっていたりと、至るところに遊び心満載。
さらに、もともとワンシュチュエーションコメディとして企画されていただけあって、メインの舞台となる古美門邸のセットのこだわりは尋常じゃない。和洋折衷絶妙に配置された小道具(片隅にセグウェイまである!)や内装は見るものをドラマの世界に没頭させる。当初は台本になかったという食事シーンも、“人間の欲を否定しない”というこのドラマを象徴するものだ。いちいちおいしそう!
そして、このドラマ最大の原動力は、なんといっても古沢良太の脚本だ。『ALWAYS 三丁目の夕日』『キサラギ』『ゴンゾウ 伝説の刑事』『相棒』『鈴木先生』と振り幅の広い脚本で評価の高い彼の特長は、スピード感溢れた物語展開と伏線が張り巡らされた緻密な構成が両立している点。「ながら見」を許さない、くぎ付けにならざるを得ない脚本であり、まさに『リーガル・ハイ』はその真骨頂なのだ。
脚本・演者・演出が互いに信頼し合い、そして何より視聴者を信頼して作られている。それらが一体になって、ある高みに到達しようとしている。
いよいよクライマックスに突入した『リーガル・ハイ』。その導入である第9話はまさに圧巻だった。今度は公害訴訟。そして第4話とは逆に、住民側の弁護を依頼される古美門。だが、公害被害を訴える老人たちを冷ややかに見つめ「彼らには、‟戦争”と“ズワイガニ食べ放題付きバスツアー”との区別がまったくついていない」と言い放ち、弁護を引き受けることを拒否していた。しかし、三木らとの駆け引きの中で結局その争いに足を踏み入れることになった古美門は、まず住民たちの戦う姿勢を問いただす。「金がすべてではない」「誠意を見せてくれれば(それが相手に手込めにされていると薄々分かっていても)納得する」「“絆”がなにより大事」「なんだかんだでうまくやっていけばいいじゃない」と和解しようとする“善良な市民”たちに、「これがこの国のなれ合いという文化の根深さだ」と吐き捨てる。
「土を汚され、水を汚され、病に侵され、この土地にももはや住めない可能性だってあるけれど、でも商品券もくれたし、誠意も絆も感じられた。(略)これで土地も水も甦るんでしょう。病気も治るんでしょう。工場は汚染物質を垂れ流し続けるけれど、きっともう問題は起こらないんでしょう。だって絆があるから!」
彼らのやりとりに「原発」などの問題を想起させるのは容易だ。でも、それだけではない。思い当たることは、僕らの心の中に無数にある。だから彼の毒舌は痛いし、響く。
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