三池節炸裂! 往年の名作が歌と笑いと涙でリニューアル『愛と誠』
#映画
今週は、往年の漫画や童話を題材にとり、現代的なアレンジを加えて大人向けの娯楽映画に昇華させた意欲作2本を紹介したい。
6月16日公開の『愛と誠』(配給:角川映画・東映/新宿バルト9他全国ロードショー)は、1970年代に週刊少年マガジンに連載された梶原一騎原作・ながやす巧作画の同名漫画を、『クローズZERO』(2007)『十三人の刺客』(10)の三池崇史監督がミュージカル場面を挿入するなど大胆な演出で映画化した話題作。良家の令嬢・愛(武井咲)は、幼い頃に助けられた誠(妻夫木聡)と運命の再会を果たす。超不良で少年院送りになった誠を更生させようと、愛は両親に頼み込んで自分の通う名門高校に誠を編入させ、献身的に尽くす。その甲斐なく退学処分になった誠は、不良たちであふれる底辺校へ転入し、愛と優等生の岩清水(斎藤工)も後を追う。誠が心を通わせる由紀(大野いと)、由紀を慕う番長・権太(伊原剛志)、誠に恋したスケバングループのガムコ(安藤サクラ)らの思いが交錯し、やがて学校全体を巻き込む大騒動へと発展していく。
純愛、アクション、ミュージカル、コメディなどさまざまな要素が詰まった本作。とりわけ、要所要所でストーリーにぴったりハマる『激しい恋』『あの素晴らしい愛をもう一度』といった懐メロの歌謡曲を歌い踊るミュージカルシーンのおかげで、昭和テイストが過剰なまでに強調され、絶妙な味わいとおかしみが漂う。既存曲のアレンジと新曲書き下ろしを音楽プロデューサーの小林武史が、また振付をパパイヤ鈴木がそれぞれ担当するなど、製作陣も豪華。映画初出演の武井咲が一途な愛で空回りしまくる天然お嬢様役を好演、大野いとの陰りある表情も印象的。岩清水の「メガネ」に関する叫び、権太が患う「病気」など、真顔の演技で爆笑を誘う小ネタも満載だ。とはいえ、熱さと純粋さに満ちていた昭和の時代を、歌と笑いと涙で相対化して現代の観客に提示するという意図も見逃せない。幅広いジャンルの映画を精力的に発表し続けている三池監督らしい“濃い”一本だ。
一方、6月15日に封切られる『スノーホワイト』は、誰もが知るグリム童話の『白雪姫』をベースに、悪の女王と戦うヒロインの姿を描くアクションアドベンチャー。妻を亡くしたマグナス王が新たな妃として迎えたのは、美に執着する魔女のラヴェンナ(シャーリーズ・セロン)だった。ラヴェンナは王を殺害して女王になり、幼い王女スノーホワイトを城内の塔に幽閉する。美しい女性に成長したスノーホワイト(クリステン・スチュワート)は、女王から命を狙われるが、すきを突いて城から脱出。平和な王国を取り戻すため、仲間たちと共に立ち上がる。
女王の問いかけに答える魔法の鏡、7人の小さな森の番人たち、姫を眠らせる毒リンゴといった『白雪姫』の有名な設定は残しつつ、自ら剣を掲げて先陣を切り、味方を鼓舞して敵に立ち向かうという、ジャンヌ・ダルクのような歴史活劇のヒロインを描くのが新趣向。『トワイライト』シリーズのクリステン・スチュワートが強い女性像で新たな魅力を発揮し、女王の命を受け姫を追跡する狩人に扮する『マイティ・ソー』(11)のクリス・ヘムズワースと共に本格的なアクションを披露している。同じく『白雪姫』を題材にした映画で、ジュリア・ロバーツが初めて悪役に挑んだ『白雪姫と鏡の女王』(9月公開予定)との評価・興収面での対決も大いに気になるところだ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『愛と誠』作品情報
<http://eiga.com/movie/56814/>
『スノーホワイト』作品情報
<http://eiga.com/movie/56725/>
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