やめろと言われても、今では遅すぎたッ! 妻夫木聡&武井咲主演の過剰なる純愛劇『愛と誠』
#映画 #パンドラ映画館
木聡。額のキズをからかわれると、誠の怒り
パワーはマックスとなる。
三池監督は70年代に発表された原作を、どう現代的にアレンジしたのか? 音楽プロデューサーに小林武史、振り付けにパパイヤ鈴木を投入してのミュージカル仕立てという劇薬を注入した。岩清水弘(斎藤工)は「空に太陽があるかぎり」を暑苦しいほどエネルギッシュに歌い、文学少女・高原由紀(大野いと)への絶対的な愛を誓う蔵王権太(伊原剛志)は狂ったように「狼少年ケン」を吠え叫ぶ。あぁ、何と青春とは恥ずかしいものなのだろうか。人は恋をすると周囲が見えなくなってしまう。相手のことしか考えられない。青春ラブストーリーをミュージカルとして描いた三池監督の選択は、とっても正しい。
原作ものは一度バラバラに解体してから、エッセンス的部分を抽出して映画として再構成することをセオリーとしている三池監督。人気俳優たちが原作に登場するキャラクターたちの物まねを演じることで良しとする、あまたの監督たちとは一線を画するところだ。しかしまぁ、梶原一騎の実弟・真樹日佐夫先生との交流の深かった三池監督が、『愛と誠』の世界をミュージカル仕立てでここまでぶっ壊してみせたことに二度驚いた。
『十三人の刺客』(10)の公開時に三池監督にキャスティングについて聞いたところ、興味深いコメントが返ってきた。『十三人の刺客』の“刺客”チームは主に映画畑出身者で固め、対する“殿さま”チームには日本屈指のミュージカル俳優として活躍する市村正親とSMAPメンバーとしてスポットライトを浴び続ける稲垣吾郎を配したのだと。ステージ上で華麗に歌い踊るスターたちを、みんなで泥まみれにしてやれという“裏テーマ”のもと『十三人の刺客』は作られたのだった。80年代はテレビ映画や2時間ドラマの助監督として汗水を流し、90年代は低予算なVシネやインディペンデント映画を眠らずに量産してきた三池監督の“ミュージカル=華やかなもの”をぶっ潰してやりたいという“暗い情熱”を感じさせる。でも、稲垣吾郎も市村正親も泥まみれになることで俳優としての高い評価を受けることになった。これこそ、三池監督ならではの“歪んだ愛情”ではないか。
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