怖さと面白さが同居した新たな笑い?『テベ・コンヒーロ』の悪意
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そして実際に現れたコウメ太夫は目を、耳を疑うくらい、想像を超えてヒドかった。奇しくも有吉は途中で「予想を裏切るのが笑い」と言ったが、そうであるならばこれも間違いなく「笑い」だった。
リズムネタなのに最初から字余り、字足らずは当たり前でリズムに乗れていない。あるあるネタのはずなのに、「偏差値の低い学校に入学したら先生がチンパンジーでした」などと「ウソにもほどがある」ネタ。途中、ギターを手にしたりイタコになったりと雑過ぎるネタが続き、極めつけはフリップネタ。民謡「一週間」の節に合わせて「月曜日は離婚通知書がきて~♪」と歌い出すのだが、そのフリップに描かれた絵が落書きレベルでヒドい。いや、もはや怖い。木曜日には「窓から落ちて~♪」とウソが始まり「土曜日ははた~ん~♪」である。まだ終わらない。歌は2番に突入。スリにあって、オレオレ詐欺にあって、ドブに落ちて、雷に打たれ、竜巻にのまれる。「ドブ」である。そして「土曜日ははた~ん~♪」だ(しかも2回目には「はた~ん」も間違えてちゃんと歌えない)。しかし爆笑するしかなかった。
と同時に、芸人としてどこか壊れてしまっているであろうコウメ太夫の、深いようで薄っぺらい闇と虚無感に戦慄が走った。
笑いの世界には、つまらなすぎて失笑する「裏笑い」という種類の笑いがある。企画を聞いた段階で、そういった種類のものを楽しむのだろうな、という予感はあった。しかしそんな生半可なレベルではなかったのだ。「裏笑い」には、ある種の「愛」が確かにある。対象の相手の「かわいげ」を含めて笑うのだ。
しかし、この日の放送には「悪意」しかなかった。
壊れゆく芸人の末路をさらに叩き潰すような、残酷な見世物小屋のような世界。ツッコミという愛では足りない、ゾクゾクするような悪意に満ち溢れていた。罪の意識すら感じてしまう笑い。
そしてその「悪意」は、ただただ「面白い」のためだけに注がれている。結果、「裏笑い」とは質の違う、「怖さ」と「面白さ」が同居した新たな次元の笑いが誕生したのだ。
『テベ・コン』の悪意は伝説を呼ぶ。伝説を見逃したくなければ、火曜深夜にチャンネルを合わせればいい。ただし幾ばくかの覚悟を持って。爆笑しながら自分自身の悪意とも向き合うことになるのだから。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
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