「年寄りをナメるな!」老人ホームで聞こえた、人々の生活史『驚きの介護民俗学』
2012/06/03 08:00
#本
「そこでは利用者は聞き手に知らない世界を教えてくれる師となる。日常的な介護の場面では常に介護される側、助けられる側、という受動的で劣位な『される側』にいる利用者が、ここでは話してあげる側、教えてあげる側という能動的で優位な『してあげる側』になる。(略)そうした介護者と被介護者との関係のダイナミズムはターミナル期を迎えた高齢者の生活をより豊かにするきっかけとなるのではないか」(本文より)
ともすると、僕らはすぐに老人を「弱者」とみなして、手厚く保護をしようとする。だが、現代っ子には窺い知れないほどに数多くの経験をしている彼らは、決してただの弱者ではないのだ。もちろん、老人たちの声に耳を澄ますことは、とても大変なことだ。だが、人間として尊敬を持ちながら真摯に彼らに接することで、介護は民俗学にとどまらない新たな発見の場にもなるだろう。
(文=萩原雄太[かもめマシーン])
●むぐるま・ゆみ
1970年生まれ。大阪大学大学院修了。文学博士。「神、人を喰う―人身御供の民俗学」で2003年サントリー学芸賞を受賞。東北芸術工科大学准教授を経て、現在郷里の静岡県で特養内ディサービスに介護職員として勤務。
最終更新:2012/06/03 08:00
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