“三島割腹事件”を若松孝二監督が映画化!『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』
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バルコニーでの演説後、割腹自殺に及ぶ。
“キング・オブ・インディペンデント”若松孝二監督の『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(08)『キャタピラー』(10)に続く、“昭和三部作”の完結編となる『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』。1970年11月25日に自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自殺を遂げた作家・三島由紀夫が日本の未来を憂う若者たちと「楯の会」を結成し、三島事件を引き起こすまでの軌跡を描いたものだ。三島由紀夫役を演じたARATAが本作に出演したことがきっかけで、「アルファベット表記はこの作品に相応しくない」と本名の井浦新に芸名を改めるなど、男たちの激情が渦巻く力作となっている。
由紀夫。本作をきっかけにARATAから改名した
井浦新が渾身の演技に挑む。
映画はまず、日比谷公会堂で演説中の日本社会党委員長・浅沼稲次郎が17歳の少年・山口二矢に刺殺される瞬間のニュース映像で幕を開ける。沢木耕太郎のノンフィクション小説『テロルの決算』(文藝春秋)でも知られるショッキングな暗殺事件だ。1960年に起きたこの事件を、若松監督は未成年者による殺人事件とは解釈せず、自国を愛するあまりに直接行動に出た17歳の少年の純粋さに共鳴している。17歳のときに実家を飛び出して上京した若松監督は、この事件当時はまだピンク映画『甘い罠』(63)で監督デビューする前の何者でもなかった。何者でもなかったこのアウトロー監督にとって、よっぽど忘れがたい事件だったのだろう。また、この国のことを憂いていたのは山口二矢だけではなかった。獄中で山口二矢が首吊り自殺を遂げるシーンが映し出され、カメラがパーンすると、そこには書斎で短編小説『憂国』を執筆中の三島由紀夫(井浦新)の姿がある。戦後の日本社会が物質的に満たされていく一方、日本人の美しい心がけがれていく。日本語による美しい文章を綴る三島由紀夫には、そのことが堪え難かった。
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