パーティ感覚で楽しく仕事ができちゃう!? 日本初のコワーキング本『つながりの仕事術』
#本
コワーキングの概念は本書を読むことで理解できるが、実際のところ、コワーキングスペースとはどういう空間なのか。著者のひとりである佐谷氏が主宰する「PAX Coworking」を訪ねてみた。世田谷区経堂の農大通り商店街にある「PAX Coworking」は8人掛けの大テーブルをメーンに小ぶりのテーブルなども置かれた落ち着いた内装のオフィス空間。受付はなく、大テーブルに置かれたノートに名前と連絡先(それと面白いコメント)を記入すればOKとのこと。この日は正午という早い時間帯だったため、人影はまばらだったが、ノートパソコンを前にした佐谷氏がニコニコと待っていてくれた。
ひとりで集中して働くのに疲れた人は、気分転
換狙いでコワーキングスペースを利用するといい
かも。
佐谷 「日によって、集まる顔ぶれも人数もバラバラなんです。普段は10〜20人前後で、イベントをやる日は40人くらい集まったこともあります。受付はありません。初めて来た方は戸惑うでしょうから、ボクがここで仕事をしているときは『こちらのテーブルが空いているから、どうぞ』と最初に声を掛けるようにしています。そのくらいですね。ここはしゃべりながら仕事をするのが好きな人たちが集まっているスペース。初めて来た方でも5分もすれば、雰囲気が分かって馴染んでしまう(笑)。オープン前は入会証や会員規約とか作ったほうがいいのかなとも考えたんですけど、そういうのはなしで参加者が自由に自発的にやっていくほうがコワーキングらしいと思い、作らないことにしたんです。メンバーは現在のところIT関係者が多いんですが、他にも農業支援者、雑誌編集者、研究者と様々です。地方の企業に勤めている営業マンで東京での拠点として活用している人もいれば、将来的に起業することを考えて自費で通っているサラリーマンの方もいます。いろんな人がいろんな使い方をしていますね。フリーライターの方はまだ少ないので、もっと集まってくれるとうれしいんですけど(笑)」
佐谷氏によると、コワーキングスペースの運営は登記上は不動産ビジネスに分類されるが、実態はコミュニティビジネスなのだそうだ。学生の頃から海外旅行好きで、いろんな人たちと交流する楽しさを覚えた佐谷氏は、会社員やフリーランスを経験後に世界初のパクチー料理専門店「パクチーハウス東京」を2007年11月に開店。様々な人たちが触れ合えるよう相席を推奨し、誰でも参加できる立食パーティを月に数回開いている。このオープンな雰囲気のレストラン経営をきっかけに、2010年8月に佐谷氏は東京初となるコワーキングスペース「PAX Coworking」を立ち上げた。
佐谷 「意識して明るい内装にしたこともありますが、パクチーハウスで食事をするお客さんたちはニコニコと食事を味わいながら、他のお客さんとの交流も楽しんでいる。お店にいる間はネガティブなことは言わないんですよ。なんでだろうなぁと考えていたら、『食事のときは楽しく過ごしたい』ということだと気づいたんです。そこで、食事時間を楽しく過ごすだけでも幸せな気分になるんだから、1日楽しく仕事をすることができればもっと素晴らしいんじゃないかと思ったんです。そのときはまだ“コワーキング”という言葉を知らず、漠然と“楽しいオフィス”というイメージだけでした。パーティするみたいに、いろんな人たちが集まって賑やかに仕事する場があればいいなと。パクチーハウスを開店したときもそうでしたが、“楽しいオフィス”“パーティするようなオフィス”とかボクが言い出したので周囲は心配したと思いますよ(笑)。そのうち、ネットを見ていたら、すごく楽しそうに働いている人たちの写真が目に留まったんです。それがロンドンのコワーキングスペース。その写真を見て、『自分と同じことを考えている人がいて、すでに実践しているんだ』と感激したんです。ちょうど、パクチーハウスの上のフロアが空いていたので、同じビル内でPAX Coworkingを始めたというわけなんです。まだまだコワーキングという言葉を広く浸透させていかなくちゃいけない段階ですが、『私もコワーキングスペースを開きたいんですけど』という問い合わせが地方も含めてかなりあるんですよ」
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