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日刊サイゾー トップ > カルチャー > 本・マンガ  > 『プリキュア シンドローム!』

少女から「大きなお友達」まで魅了する、シリーズの底力に触れる『プリキュア シンドローム!』

 徹底したファン目線で構成された本書は、「公式設定集」が言外に前提としがちな没入の多様な回路に一つの道筋を与えており、数々の興味深い事実を知ることができるだろう。例えば「プリキュア5」の背景として、前年の『ふたりはプリキュア Splash☆Star』の商業的不振についても率直に語られており、長期シリーズ継続の困難をうかがうことができる。プリキュアシリーズは一作ごとにそれぞれの個性を持つが、「プリキュア5」では、妖精キャラのココとナッツの「イケメン化」が、興味深い要素として際立っている。さまざまな能力を授ける助力者としての小動物は、子ども向け作品では常に重要な存在だ。こうした「相棒」に淡い恋愛要素が入り混じることで生まれるドラマは、2年目の『Yes!プリキュア5 GoGo!』で「6人目」の役割を演じるミルク=ミルキィローズとともに、妖精キャラの変身の持つ可能性をうまく引き出している。

 また、もう一つの鷲尾P作品として、映画『プリキュアオールスターズDX』三部作も扱われており、多人数のプリキュアの共闘可能性を、まさに「プリキュア5」が切り開いたことが示されている。本書では構成上『フレッシュプリキュア!』以後の梅澤淳稔プロデューサー作品が扱われていないが、エンディングや映画を彩る3DCGのダンス表現など、新たに導入された要素も含めた形での「オールスターズ」作品は、2012年の『プリキュアオールスターズNewStage みらいのともだち』といった形で、今後もさらに展開されていくことを予感させる。

 本書の予想外の産物として、現時点では『ハートキャッチプリキュア!』をシリーズ最高作と考える(反面「5」を軽視しがちだった)筆者に、「プリキュア5」の魅力を改めて気付かせる契機となったことを指摘したい。よって、「プリキュア5」ファンだけでなく、他の作品のファンであっても、加藤レイズナの「クエスト」に立ち会うことで、結果的にプリキュアシリーズ全般の魅力について多くを知ることができるだろう。
(文=石岡良治)

最終更新:2012/05/27 15:00
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