テレビ局映画を批判しても意味がない!? “アンチ・メジャー”を掲げる日プロ大賞の存在意義
#映画
ベストテンの第1位に選ばれ、作品賞を受賞したのは平野勝之監督のセルフドキュメンタリー『監督失格』。元カノ(林由美香)の死に遭遇したAV監督が、その苦しみを乗り越えようと七転八倒する姿を描いたもの。元カノの死亡現場を記録した映像が賛否を呼んだ衝撃作だが、愛する者を失った事実を直視した上で、遺族と共にその苦しみを分かち合うという非常にシンボリックな“喪”の映画でもある。一方、新人監督賞に選ばれた大根仁監督の劇場デビュー作『モテキ』は、その対局に位置する爽快感溢れるラブコメディ。余震の続いた昨年4~6月に都内及び関東周辺で撮影が行われ、自粛ムードを吹き飛ばすお祭りムービーとして9月に公開された。また、『まほろ駅前』や『婚前特急』は震災直後の4月公開でなければ、もっと違った興行成績となっただろう。“日プロ大賞”のベストテンおよび個人賞の受賞作は、3.11後を考えさせる作品が並んでいる。
若松孝二監督、満島ひかり、町田マリー、
菅田俊、鈴木卓爾監督、青山真治監督、細田
守監督らが駆けつけた。
「確かにそういう一面があるかもしれません」そう答えたのは、“日プロ大賞”の実行委員長を務めている大高氏だ。監督、プロデューサー、脚本家、宣伝マン、興行関係者、映画評論家、編集者らで構成された21人の選考委員の声を取りまとめる大高氏が、今年の選考について語ってくれた。
大高 「『監督失格』も『モテキ』も直接的に震災に触れているわけではありませんが、“3.11後の映画の在り方”というものが選考メンバーの頭の中に意識・無意識のうちに働いたという一面はあるでしょうね。ベストテンの選考では、『監督失格』が圧倒的支持を集めました。震災の影響を受けたかどうかに関わらず、『監督失格』は“個の在り方”を徹底的に見つめた作品と言えるでしょう。個人というより“個”ですね。のっぴきならない“個”として自身がどう生きてきたかを、力強く表現した映画です。個の在り方を見つめるというのは、日本映画の伝統的なスタイルでもあるわけです。『監督失格』の平野監督はこれまで自主映画やAV作品を撮り続けてきた自分の生き方を、映画的表現の中で爆発させたように思います。『モテキ』の大根監督も深夜ドラマで様々な表現の試みに取り組みながら、劇場版『モテキ』でさらなる高みに挑んだ。形はまったく違いますが、『監督失格』も『モテキ』も個のブザマなまでの生々しいもがきを描き、映画表現の新しい可能性に挑んだ作品だと評価できるでしょう」
■反響を呼んだ“洋画はダサい”発言の真意とは?
2011年の日本映画界全体の興収は1,811億円。2010年の2,200億円から18%減となった厳しい数字だ。そんな中、東宝1社のひとり勝ち状態が続く。映画産業を豊かなものにするためには、メジャーなるものと対立する“アンチ・メジャー”が確固たる力を持たなくてはならない、というのが大高氏の持論である。
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