相撲界の不祥事に斬り込む、ブラックジョークDVD『日本ふしぎ発見!』
#DVD
(TOエンタテインメント)
再生ボタンを押すと、テーマソングに合わせて『日本ふしぎ発見!』とやらの画面が流れてきた。
「皆さん、こんにちは。『日本ふしぎ発見!』の時間がやってまいりました。今回も、さまざまな日本の謎について勉強していきたいと思います」と男性司会者があいさつし、女性司会者が「今回クローズアップするテーマは、相撲です」と続ける。
これは、『日本ふしぎ発見!』(TOエンタテインメント)というお笑いDVD。日本で不思議に思うさまざまな世界をあらゆる角度から“憶測で”紹介しつつ、脱線していくのがコンセプトだそうだ。監督は“お笑い映像界のピカソ”といわれている山岸聖太氏、イラストはキモカワ自作アニメがネット上で話題となり、一部熱狂的な信者もいる谷口崇氏……このプロフィールだけでも、何かが起こりそうな匂いがぷんぷんする。しかし、相撲にそんなに不思議なことってあったっけ……? そう思う間もなく、畳み掛けるように女性司会者はこう続けた。
「今回は、日本の国技『相撲』のさまざまな秘密、そして、隠された謎について、たっぷりとご紹介していきます(ニッコリ)。そして、いまだに世間を騒がせている八百長問題。春場所が中止になったりと、力士の皆さんには大変な死活問題です。そこで今回番組では、もう二度と間違った八百長をしないために、“正しい八百長の仕方”もお教えしましょう」
さらりとおかしなことを言い放つ女性司会者、そしてそれに対し、「うわー、それは力士の皆さんも必見ですねー!」と軽ーく乗っかる男性司会者。この時点ですでにどこから突っ込めばいいか分からないが、こんなの序の口。このDVDの本領発揮は、相撲の世界についての本格的な紹介コーナーが始まってからであった。
といっても、いきなり「正しい八百長の仕方」のコーナーが始まるわけではなく、「決定版!ちゃんこレシピ」「礼儀作法ってなんだろう?」と一見、真面目に見えるコーナーから始まった。ところが……。
女性司会者 「“相撲”でググってみたところ、相撲とは、『健康と力に恵まれた男性が神前にてその力を尽くし、神々に敬意と感謝を示す行為』と出ます」
ちなみにこれ、筆者もググってみたところ、Wikipediaに書かれている内容とそのまんま同じである。そして、力士が土俵に上がった際にする動きについて、「拍手を打って、両手を広げ、手の平を下に向ける、これは“私は武器を持っていません、素手で正々堂々と勝負します”という意味です」との解説。勉強になるなと思いつつ、念のため調べてみたら、やはりWikipediaに同じ内容が。便利だな、Wikipedia!
そしていよいよお待ちかね、「正しい八百長の仕方」のコーナーが始まった。バレない八百長をするための対処法についてである。曰く、メールなどの直接的なやり取りは絶対にNG。例えば、伝書鳩を使う、まわしの裏地に書く、絵馬に願掛け、などの方法ならばバレることはないでしょう、とのこと……。
この後、八百長コーナーは、「バレたときの対処法」の紹介、「私はこれで八百長しました」と経験者の覆面インタビュー、と悪ふざけは続くのだが、その間に挿入された架空のCMこそが、このDVDで一番の見どころかもしれない。
「遊ぼうっていうと 遊ぼうっていう
死にたい?っていうと 死にたいっていう
金ほしい?っていうと 金ほしい!っていう
そうしてあとで こわくなって、
ごめんねっていうと ごめんねっていう。
八百長でしょうか? いいえ、誰でも。」
思い起こせば、相撲の八百長メールが騒ぎになったのが、昨年の2月。その1カ月後には東日本大震災が起こり、中途半端なままかき消されたモヤっと感があった。制作側もそんなモヤモヤを抱いていたのだろうか。このDVDが発売された時期は2011年の9月。震災から少し時間を置いて、相撲界の黒いウワサを笑いに変えつつも、ケンカを売るような挑戦的なDVDを作り上げた制作陣はあっぱれだ。
惜しむらくは、ポポポポ~ンのパロディCMがなかったこと。だが、「あいさつするたび、八百長増えるね」なんてCMじゃ、ダメか。
(文=朝井麻由美)
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