牛丼「東京チカラめし」出店ラッシュで、居酒屋は過去の遺物!?
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牛丼「東京チカラめし」出店ラッシュで、居酒屋は過去の遺物!? – Business Journal(5月18日)
牛丼一気食いするシーンは美し過ぎて落涙…
大手広告代理店・博報堂時代は、マーケティングセクションにて食品、飲料、金融などの戦略立案に従事していた子安大輔氏。その後、主に飲食業プロデュースを手掛けるカゲン取締役として、過去50件以上の店舗プロデュース、新規ビジネスに携わってきた子安氏が、気になるあのブランド、企業の最新動向を探る。
突然ですが、牛丼っておいしいですよね。皆さんは、どのチェーン店がお好きですか? 「吉野家」「すき家」それとも「松屋」? 「ワタシ恥ずかしくて、1人じゃ牛丼屋さんには入れな〜い」って? そんなことは聞いていませんから……。
今考えていただいた中で「東京チカラめし」が頭に浮かんだあなた、新しい動向に敏感ですね。ただしこのチェーン店舗はまだ首都圏にしかないので、知らない人も多いことでしょうから、まずは簡単に説明します。
まず、上の画像を見てください。看板のキーカラーのオレンジ色は、どうしても「吉野家」を連想させます。
「東京チカラめし」とは、11年6月に1号店ができたばかりの新しい牛丼チェーンです。これまでの牛丼チェーンとの大きな違いは、「焼き牛丼」という商品を前面に掲げていることです。
従来の牛丼では牛肉を「煮る」のが普通ですが、東京チカラめしではそれを「焼く」という工程に差し替えているのです。あらかじめ牛肉に火を通してあるのではなく、その場で焼くため、ほかの牛丼チェーンに比べると注文から提供まで時間がかかるのが、難点といえるでしょう。
さて、今回触れたいのは、味の話ではありません。この店舗を経営しているのは、三光マーケティングフーズという大手外食企業ですが、この会社はこれまで居酒屋ばかりを展開してきました。「東方見聞録」「月の雫」などの業態がありますが、一番有名なのは「金の蔵Jr.」という、270円程度の低価格均一料金で飲み物や食べ物を提供しているお店です。
一般的に言えば、アルコール飲料は粗利益を上げやすいので、居酒屋経営が得意な企業が、わざわざ食事中心の業態に参入する必要はあまりありません。しかも、牛丼といえば誰しもがその過当な値引き合戦を目にしていますから、そんな競争の激しい市場=レッドオーシャンに自ら飛び込むことは正気の沙汰とは思えません。
しかし、昨年6月に1号店を開店して以来、三光マーケティングフーズは驚くべきスピードで「東京チカラめし」の出店を続けており、スタートから1年も経っていないにもかかわらず、すでに73店舗も展開しているのです(5月1日時点)。居酒屋チェーンの経営で培ってきた食材の購買力を生かして、先行する3大チェーンとほぼ同価格の280円にて牛丼を提供しており、真っ向勝負を挑んでいることがわかります。
こうした戦略の背景には、これまで展開してきた業態の経年疲労や、東日本大震災直後の「飲み」の自粛などがあったのだと思われます。しかし、そこには
「夜のアルコールを頼みにした飲食店は、将来的に厳しいかもしれない」
という、かなり本質的な未来予測がベースにあるはずです。むしろ、そうした大きな課題に対して、震災を通して本気で向き合った結果、従来の出店戦略を大きく見直したというのが正しい言い方かもしれません。
そしてこの見直しは、同社のウェブサイトの「沿革」を見るとはっきりわかります。昨年4月までは、新規出店は先に触れた「金の蔵Jr.」がほとんどだったものが、6月を境にほぼすべて「東京チカラめし」に切り替わっているのです。まるで、まったく別の会社になってしまったかのような変わり身の早さです。
ワタミ、ゼットンetc.続々と「お酒」から遠ざかる外食企業
ここで挙げた三光マーケティングフーズは極端な例ですが、「アルコール業態中心の外食企業」が少しずつその姿を変えてきている事例は、ほかにも見て取れます。
例えば夜向きのダイニング業態を多数展開する名古屋発の企業・ゼットンは、この数年ハワイアンカフェ「アロハテーブル」を積極的に出店しています。この店では夜はお酒を飲んでいる人も多いですが、「ハワイ」を掲げていることもあって、明るく健康的な雰囲気ですし、日中には子供やペットを連れて、お茶を飲んだり食事をしたりしている人の姿をよく見かけます。
同社はさらに一歩進んで、自然食をベースとする食事・マクロビオティックを打ち出したデリ業態「アイランドベジー」を東京・広尾に出店しています。
店名から何となくわかる通り、野菜を中心とした健康的な食べ物がショーケースには並んでいて、そこからは「夜の香り」は微塵も感じられません。そしてつい先日、渋谷のヒカリエに「ハワイアン・デリ・カンパニー with アイランドベジー」という店もオープンさせました。
最後にワタミのケースを見てみましょう。同社は外食事業を中核にしながらも、介護や食事宅配事業なども手掛けているのは、多くの方がご存知でしょう。外食事業としては、ファミレスなど食事中心の業態も一部展開していますが、その大多数は居酒屋です。そして、同社の12年3月期の各事業別実績を見ると、大変興味深いことが浮かび上がります。
【外食事業】
売上高:837億円/経常利益:33億円
【介護事業】
売上高:284億円/経常利益:38億円
【宅食事業】
売上高:262億円/経常利益:22億円
売上規模で見れば、依然として外食事業が主体であるのは間違いありません。しかし、利益ベースで見ていくと、介護はすでに外食を上回っており、売上規模が外食の3分の1以下の宅食も、利益では外食の3分に2に迫っているのです。この収益構造からは、ワタミはすでに「居酒屋の会社」ではなくなっていることがはっきりと見て取れます。
大の酒好きの私としては、よくいわれる「人々(特に若者)のアルコール離れ」を安易に認めたくはありませんが、実際にはさまざまなデータがそれを物語っているのも事実です。そして、「お酒を飲まない人」は、これからもやはり増えていくのでしょう。巷で話題のノンアルコール飲料も、そんな時代の過渡期ゆえの商品なのかもしれません。
お酒を積極的に売ってきた外食企業が、「食」にフォーカスした店を出し始めたら、それは既存店舗の収益性が急激に悪化しているか、あるいは逆に時代を先取りして攻めの一手を打っているかのどちらかです。その見極めは慎重にしたいところですね。
(文=子安大輔/株式会社カゲン取締役)
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