「高速バス事故と同じ、事故が起きてからでは遅い」中学校での武道必修化に疑問の声
#教育
この4月から、中学校1・2年生の保健体育の授業で武道とダンスが必修になる、いわゆる「武道必修化」が実施された。
この武道必修化については、実施前より関係者からは安全確保などについて指摘や疑問視する意見もあった。
報道などではあまり取り上げられないが、中学や高校、大学での体育系部活やスポーツ活動における事件や不祥事は決して少ないものではない。活動中の事故や負傷をはじめ、いわゆる「しごき」やいじめなど、数々の問題や事件が発生し、しかも根本的に解決していない事例も多々ある。
そんな状況で、なぜ中学での武道必修化ということになったのか。これには、2006年に行われた学習指導要領の改正というほかに、霞ヶ関やスポーツ界の思惑があるのだという。自らも大学体育会系の出身で、スポーツ関連の問題についての取材を進めているルポライターの杉本哲之氏は言う。
「まず、国の方針です。国際舞台で評価されるような人材を作りたい。わかりやすくいえば、『メダルの取れる人材の育成』です」
確かに、オリンピックやその他の国際大会では、武道関係の競技は諸外国の活躍が目立つ。メダルがすべてというわけではないし、日本の強化選手が著しく劣っているわけでもないのだが、古くから武道に親しんできた日本としては、やはりメダルの数が気になるところなのだろう。
そこで、文科省としては早期に子どもたちに武道を教え込み、ゆくゆくは国際的に通用する実力者を育てたい、という意図があると考えても不自然ではない。
だが、むしろ問題は、教育指導する側の事情である。杉本氏は「日本のスポーツ界には、指導力のある人材が育っていない」と指摘する。
「日本のスポーツや武道では、指導者の育成はかなりズサンです。よい指導者がいないからメダルが取れない、と言ってもいいでしょう。諸外国、例えばフランスやロシアなどでは、スポーツや武道の指導者になるためには、厳格な育成プログラムを修了し、難しい試験に合格しなければならない。当然、実力だけでなく人格も問われる。しかし、日本にはそうしたものはありません。せいぜい、なにがしかの実績がある程度で指導者になることができるわけです」(杉本氏)
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