新時代の『ルパン三世』は規制緩和の使者?『LUPIN the Third ―峰不二子という女―』
#アニメ #ルパン三世
モンキー・パンチ原作の人気アニメ『ルパン三世』の、テレビシリーズとしては27年ぶりの新作『LUPIN the Third ―峰不二子という女―』(日本テレビ系)が放送中だ。
タイトルからもわかるように、本作の主人公はルパン三世ではなく、シリーズの名脇役である峰不二子。監督に山本沙代、シリーズ構成に岡田麿里ら女性スタッフを据え、日本の“ファム・ファタール”を代表するキャラクターの生き様を掘り下げていく。そんな内容からは、新世代の『ルパン三世』を作ろうという企画サイドの強い意気込みが感じられる。一方で本作は、スーパーアニメーター・小池健によるキャラクターデザインを軸に、これまでで最も原作コミックのイメージに近いビジュアルを作り上げたアニメ『ルパン三世』でもある。本作で初めて「新作テレビシリーズとしての『ルパン三世』」に触れる若い視聴者にも、シリーズのコアなファンにも訴求することを目指した、志の高いタイトルだといえよう。
前回のテレビスペシャルから登板の、不二子、石川五ェ門、銭形警部らの新キャストも旧キャスト陣に引けを取らぬ好演で、菊地成孔による音楽も最高にクールな仕上がり。欲をいえばもう少しストーリーには捻りがほしいところではあるものの、現在放送中のテレビアニメの中で、最重要作品のひとつであることは間違いない。
さて、そんな『峰不二子という女』には、もうひとつ注目すべき点がある。
「乳首」だ。
深夜帯に放送されているテレビアニメには、画面に不自然な光や影の入る作品が多い。これらは放送局の基準に則って、放送不可な描写に対してかけるマスクである。主に対象となるのはエログロ描写で、中でも最も厳しく規制されるのが女性の胸である。
たとえば、女性の胸描写に対する強いこだわりで知られるアニメーター・金子ひらくが監督を務めた『聖痕のクェイサー』『魔乳秘剣帖』といった作品では、乳首が描かれているカットに、画面の3分の2以上を覆う真っ白な光が被せられていた。両作ともに、物語の重要なシーンで必然性をもって乳首が描かれるため、放映版ではストーリーの細部が追えなくなるほどだった。このケースは極端だとしても、直近の作品でいえば『境界線上のホライゾン』など、「着衣の上から胸を触る」描写にすら規制がかかった作品も多く、いささかやりすぎの感は否めない。
ところが、『峰不二子という女』では、乳首が堂々と画面に登場するのである。毎回放映されるオープニング映像からバンバンと描かれ、本編でも惜しげもなく晒される。感覚としてはファッションショーでモデルが晒すものに近く、そこまで扇情的な印象は受けないものの、規制の厳しいその他の深夜アニメを見慣れているアニメファンとしては、驚かずにはいられない。さらに第4話では、コミカルで直接的な描写ではないものの、嬌声をあげて交わる不二子と銭形のセックスシーンが放送されもした。
これは「ルパン三世」というブランドの力が可能にした、例外的なことなのだろうか。それとも今後、深夜アニメに規制緩和の波が訪れるのだろうか。モニタの向こうでもこちら側でも、しばらくお騒がせな怪盗たちの行状から目が離せそうにない。
(文=御船藤四郎)
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