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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > ツイ・ハークが大復活!

“エンタの神さま”ツイ・ハークが大復活! B級映画マニアの心を焦がす『王朝の陰謀』

 今回の設定の中で、ひときわユニークなのが物語中盤に登場する“亡者の市”。漢時代に地割れによって沈んだ旧市街地が地下に残っており、お尋ね者や訳ありな人たちが徘徊するアンダーワールドを形成している。犯罪に関する裏情報を収集するなら、裏社会の住人に尋ねるのがいちばんということで、ディー判事ら一行は地下都市へと降りていく。洞窟で撮影されたというこのパートは、香港アクション映画の伝統芸であるワイヤーアクションが満載。各キャラクターが敵味方入り乱れて、洞窟内をビュンビュン飛びまくる。ちなみに本作のアクション監督はサモ・ハン。80年代の香港映画を思わせる、ユーモラスさのあるアクションが本作の味わいをより深めてくれます。

ocho3.jpgデ、デカい! バベルの塔かスカイツリーかと
いうくらいの高さを誇る超高層仏“通天仏”。
クライマックスで大崩壊しちゃいます!

 そして、クライマックスの舞台となるのは、スカイツリーとためをはるくらいの超高層大仏“通天仏”。真犯人との対峙は、2時間ドラマでは崖の上かビルの屋上と決まっている。人はなぜ、高い所に登ると「許してくれ。オレがやった」とか「結婚しよう。今度一緒に登るときはきっと3人だね」とか余計なことを口走しちゃうんだろうか。それはまぁ置いといて、きちんとサスペンスドラマのツボを押さえてくれるツイ・ハークのサービス精神がうれしい。そして、謎の解明と同時に始まるのが、通天仏の大崩壊! このお約束感がたまらんッ。正直いって、この巨大仏がいかにもCGでの書き割りっぽいんだけど、このチープさ、こけおどし感こそ、香港映画のダイゴ味でしょう!

 溢れんばかりの才能がありながらも日の当たる場所に出ることができずにいるディー判事はツイ・ハーク自身の心情が投影されているのかなぁとか、かつては志をともにした仲間との決別はツイ・ハークとジョン・ウーの関係を匂わせているのかなぁとか、そんな周囲が邪推する諸々の恩讐もB級映画ならではのうさん臭さもすべて巻き込んで巨大仏がぶっ倒れていく。ザ・カタルシス。神も仏も名声も、頼るべきものはもう何もない。後に残るは、観客を徹底的に楽しませるべきエンターテイメント道だけである。

 ツイ・ハーク卿、ここに大復活! “香港のスピルバーグ”といういかがわしい呼称の代わりに、今後はエンターテイメント道を突き進む彼の背中を追う“ツイ・ハークの息子”たちが世界各地から続々と現われることだろう。『王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件』という長たらしい邦題の本作は、王朝貴族の人体だけでなく、B級映画マニアのハートまで熱く焦がしてくれる快作だ。
(文=長野辰次)

ocho4.jpg
『王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件』
監督/ツイ・ハーク アクション監督/サモ・ハン 出演/アンディ・ラウ、リー・ビンビン、ダン・チャオ、レオン・カーフェイ、カリーナ・ラウ 配給/ツイン 配給協力/太秦 5月5日(土)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次公開 <http://www.dee-movie.com/>
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