“エンタの神さま”ツイ・ハークが大復活! B級映画マニアの心を焦がす『王朝の陰謀』
#映画 #パンドラ映画館
永遠のケレン味職人、こけおどし美学の求道者、ホラ吹き大魔人、黒忍者ハッタリくん……。どれも、香港映画界の巨匠ツイ・ハークに捧げたい尊称だ。もちろん、B級映画を愛する人間にとって、最大級の誉め言葉のつもり。“香港のスピルバーグ”と呼ばれたツイ・ハークといえば、ちょっとエッチな伝奇ファンタジー『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』、ジョン・ウー監督の出世作となった香港ノワール『男たちの挽歌』、ジェット・リーが驚異的な身体能力を発揮した武侠ロマン『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』などの人気シリーズを80~90年代に大ヒットさせた人気プロデューサー&監督。ツイ・ハークが表舞台に引っ張り上げたジョン・ウーがハリウッドで大成功し、香港に凱旋後も超大作『レッドクリフ』をメガヒットさせたのとは対照的に、近年のツイ・ハークはかつての輝きが失われた感があった。すみません、それって間違った認識でした。ツイ・ハークの本当の黄金時代はこれから始まるんじゃないかと思えるほど、アンディ・ラウ主演作『王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件』が破壊的に面白いんですよ。
で連続発生。巨大仏の建立に関わる王朝貴族が
次々と犠牲になる。
史実や民間伝承に巧みにフィクションを注入し、観る者をイマジネーションの世界に誘い込むのが、ツイ・ハーク作品の面白さ。本作の主人公は、ディー・レンチェ判事。唐の時代、中国四千年の歴史にあって唯一女帝の座に就いた則天武后に仕えた実在の名判事。“中国のシャーロック・ホームズ”と称されている人物だ。超常現象を一切信じない現実主義者のディー判事が、唐の都を騒がせる“人体発火事件”の真相を解き明かすというミステリー仕立てになっている。
ツイ・ハークはアイデアマンゆえに、SFXや小道具などに凝りすぎるきらいがあったが、今回はディー判事による謎解きという縦軸がしっかりあるため、内容にブレがない。ディー判事(アンディ・ラウ)を支えるキャラクターたちも明快。SMの女王さまばりにムチを操る男装の麗人チンアル(リー・ビンビン)、アルビノっぽいビジュアルの若い司法官ペイ(ダン・チャオ)がそれぞれの思惑を胸に隠しながらディー判事の捜査に同行し、共に王朝転覆をめぐる陰謀を追う。人体発火事件に加え、牛久大仏を遥かに凌駕する巨大仏、言葉をしゃべる鹿、敵の武器の弱点を瞬時にリサーチする降龍杖……とツイ・ハークならではケレン味たっぷりなキーアイテムが続々登場。まさにアイデアのマトリョーシカ状態。それでもって今回は、それらのアイデアがディー判事の謎解きによって見事にググ~ンと収斂されていくんです。
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