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ゆうばり4冠『くそガキの告白』が凱旋上映! “キンコメ”今野と田代さやかが見せたプリミティブな輝き

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 インディーズ映画を観ていると、時折だがダイヤモンドの原石に出くわす喜びがある。『くそガキの告白』は、2012年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で審査員特別賞、シネガーアワード賞、ベストアクター賞(今野浩喜)、ゆうばりファンタランド大賞人物部門の4冠を受賞した作品。山下敦弘、井口昇、吉田恵輔、入江悠といった人気監督たちを世に送り出してきた同映画祭の目利きぶりに狂いがないことが、ロケ地となった墨田区で4月22日に行われた先行上映を観て、確かめることができた。デジカメで撮影された本作は途中ピントが甘くなるシーンが多少あるものの、そんな些細なことなど忘れさせてしまうような怒濤のカタルシスがクライマックスで待ち構えている。いつまでたっても自分の想いを形にすることができずにいる映画監督志望のヘタレ男の叫びが炸裂する、もうひとつの『SRサイタマノラッパー』と称したくなる作品だ。

 『くそガキの告白』は映画業界の末端に何とか潜り込んだものの、自分の撮りたい作品を撮れずにうじうじしている30男が、自分にとってのミューズとなるべき無印女優と出会う物語。一見、夢を追い掛ける者同士の甘いラブストーリーに思えるが、実はもっと現実の苦みと創作に情熱を注ぐ人間の狂気が刻み込まれている。主人公の名前は馬場大輔。32歳ながら実家暮らしで母親に食べさせてもらっている。ほぼニート状態。大学の映研時代の仲間がホラー映画を撮っており、お情けでメイキングカメラ担当として参加することになった。映像の仕事をするチャンスは過去にも何度かあったが、「自分の世界観と合わない」と断ってきた。久しぶりに会った映研時代の旧友から「じゃあ、お前の撮りたい映画のメッセージはなんだ?」と問われると、口ごもってしまい、挙げ句に逆ギレする。自分が埋もれているのを社会や遺伝子のせいにしている、くそガキ野郎だ。

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 ある日、馬場大輔の淀んだ心がパッとときめいた。ホラー映画の撮影現場に幽霊役で来ていた女優・木下桃子はまったくの無名だが、いつもニコニコと笑顔を振りまいている。馬場には、そんな彼女が眩しく映る。オーディションに落ち続け、たまに映画出演できてもエキストラ同然という下積みライフ送りながら、いつか女優としてブレイクする日が来ることを彼女は健気に待っている。胸の膨らみには、未来への夢が詰まっているらしい。映画を通して訴えたいメッセージがあるわけでもない馬場だが、彼女を被写体にした映像作品なら撮ってみたいという意欲がムラムラと湧いてくる。そんなとき、ホラー映画のプロデューサーから「現場で起きた怪奇現象を取材して、ホラードキュメンタリーに仕立てろ」と命じられる。ここはドキュメンタリーの撮影を口実に、木下桃子としっぽり仲良くなる絶好のチャンス。『タクシードライバー』(76)の主人公トラビスのように不敵な笑みを浮かべる馬場。だが、ドキュメンタリーの撮影は、ヘタレ男が考えた通りには進まない。桃子の内面に馬場がカメラで迫ろうとすればするほど、事態は二転三転していく……。

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